発明は企業のもの?―職務発明制度改正が日本の産業に与える影響は
制度改正のポイントと、日本の産業への影響は
提案されている改正のポイントのひとつは、職務発明を行なった際に、発明者ではなく企業が「最初から」特許を受ける権利を得るというようにする点です。とは言っても、勤務規則によって従業員に特許を受ける権利を譲渡させるのと、法律によって最初から企業が特許を受ける権利を得るのとでは、あまり違いがないように思えます。法律の改正としては大がかりになりますが、実際上はこの点からは大きな変化は生じないでしょう。 もうひとつの(おそらくより重要な)ポイントは、発明の報酬に関する決定権を企業側に移すことであると考えられます。企業が勤務規則で定めた報奨金を支払いさえすれば、発明者がそれを越えた請求を行なうことができなくなる可能性があります。 ただし、単純に発明者への報奨金を減らすだけでは、発明のインセンティブが損なわれ、日本の産業競争力に悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。優秀な技術者が日本企業を避けて海外に就職・転職するケースも増えるかもしれません。当然ながら現在進行中の制度改正の議論においては、このような問題が生じないような制度設計が模索されています。 いずれにせよ、技術者の立場から言えば、就職先・転職先の選定にあたって条件のひとつとして職務発明規定をチェックしておくべき必然性も増してくるでしょう。 (弁理士 栗原 潔)