気になるワードは「有閑マダム」。【2024年秋冬トレンド解説|栗山愛以編】
ブランドならではの独自の視点のある日常着。
海外コレクションを取材した5人のおしゃれプロに緊急アンケート。今シーズンのムードから感動のショーまで、それぞれの視点でとらえたライブなトレンド解説をお届け。 栗山愛以 ライター&エディター
Q1. 24-25 秋冬コレクション全体のムードや傾向。
Answer:今季は各ブランドそれぞれの関心で表現しているような気がし、中心となるムードがあまり感じられませんでした。コロナ禍以降続いている、日常着を洗練させたり再解釈する手法は引き続き見られますが、ブランドならではのスタイルを提案するなど、ただシルエットや素材に少し変化を加えたりするだけではない、独自の視点があったとは思います。たとえばマリーン セルはシグネチャーの三日月柄を全面に打ち出して、少しユーモアも効かせつつ多様な人々の生活風景を描いていました。
またジュンヤ ワタナベの「パブリックアートを想定して日常着と造形物のコントラストの美しさを表現する」というテーマはほかにはない発想だったと思います。 パリ・ファッションウィーク期間中にメゾン マルジェラの2024アーティザナルコレクションのインスタレーションを見て衝撃を受けました。個人的には、これくらいトレンドがどうでもよくなってしまうような、こだわり抜かれた圧倒的な表現との出合いを期待していますが、プレタポルテではまだこうした作り込む気分ではないかもしれません。ただ、レディライクなスタイルが少し見られたので、徐々に日常から離れたドレスアップの精神が蘇りつつあるような気もします。
Q2. 注目しているトレンド(スタイル、アイテム、素材など)は?
Answer:グローブや女優帽が必須のレディライクなスタイル。"ladies who lunch"(有閑マダム)というワードが気になってはいます。
スキニージーンズ、クラシックなトップハンドルにさらにストラップを付けて傾けるプラダの新しいバッグの持ち方。レトロなムードの花のモチーフ。
Q3. 特に印象に残ったブランドとその理由。
Answer:ドーバー ストリート マーケット パリがサポートしているアイルランド出身のロイシン ピアスは、一見ドリーミーな印象ですが、確かな技術に裏付けられており、芯の強さを感じました。