【注目の裁判】「財産目的で殺害」か「無実の罪」か…真っ向から主張が対立“紀州のドン・ファン”殺害 12月12日に判決
■覚醒剤の“売人”出廷も…一人は「覚醒剤ではなく氷砂糖」
注目されたのが、覚醒剤の“売人”とされる男2人の証人尋問だ。死因と直接つながる覚醒剤を須藤被告がどのように手に入れたのか、裁判の行方にも影響を与える証言にもなる。 1人目は須藤被告と直接接触した男。「4~5グラムの覚醒剤を10~12万円で売った」と語り、渡した相手は須藤被告だと話したが、態度はよそよそしく、調達方法などの経緯の説明もかなり曖昧だった。 一方で、須藤被告とネット上でやり取りをし覚醒剤を用意したという2人目の男は、「覚醒剤ではなく氷砂糖を売った」と証言した。ここでいう氷砂糖は覚醒剤の隠語ではなく、正真正銘の氷砂糖だと説明する。検察は、覚醒剤に置き換えて話を聞いてほしいというが、「駆け出しで、入手できる人脈がなかった」「ヌンチャクを使い彼女に氷砂糖を砕かせた」などと証言。 また、須藤被告に売ったとされる数日後に大阪府内のコンビニで、偽物の覚醒剤を売ったとして客とトラブルになり、警察沙汰となった事実も明らかにされた。 検察側の証人にもかかわらず、須藤被告が本当に覚醒剤を手に入れられたのか強く疑問が残るやり取りとなった印象だ。その一方で、須藤被告から「旦那にばれるから」と売ることを急かされたとも話し、後の被告人質問での「野崎さんから購入するよう言われた」という旨の発言と矛盾するような証言も出てきている。
■元妻は法廷で「遺産目的は隠してない」「覚醒剤は購入依頼された」
11月に3日間にわたり行われた被告人質問。法廷で2か月ぶりに口を開いた須藤被告が、経緯の詳細をどのように語るのかが注目された。 「普通の愛し合って結婚するとは違う」 「離婚するならどうぞって感じですし」 「遺産目当てということは誰にも隠してない」 一つ目のポイントは、須藤被告が『遺産目当てで結婚した』という事実を否定することなく、むしろ何度も繰り返し肯定したことだ。須藤被告は、「結婚生活続けられませんね。離婚します」などと、自ら離婚を切り出していたとも明かした。検察側が主張した「動機」=「離婚により遺産が手に入れられなくなることを恐れた犯行」という点を、あえて遺産目的の結婚であったことを強調することで真っ向から否定したのだった。 もう一つのポイントは、覚醒剤の入手理由について、性交渉で機能不全になった野崎さんから「もうダメだから覚醒剤を買ってきてくれないか」と須藤被告は証言した点だ。 須藤被告の法廷での証言を整理すると、以下のようになる。 ▽「お金くれるならいいよ」と返事したところ20万円を手渡された。 ▽買い方が分からなく、一旦は放置したものの「あれ(覚醒剤)どうなった?」と聞かれたことで売人と接触。1グラム10万円ほどで購入した。 ▽野崎さんに購入したものを渡したが「あれは使い物にならん、偽物や。もうお前には頼まん」と言われた。 「偽物を売った」という売人の1人の話とも近い部分があり、供述は非常に具体的なものだった。 一方で、野崎さんから手渡された20万円について、検察は「北海道から野崎さん宅がある田辺市までの交通費ではないか」と指摘した。須藤被告は20万円を手渡された前日、住民票を移すために実家のある北海道から田辺市へ移動していたのだ。須藤被告は「社長(野崎さん)と一緒に来たので交通費はその時社長が払っている」と話したが、その日、須藤被告は1人で移動しているはずで矛盾が生じている。“売人”とされる男2人や須藤被告の発言の信ぴょう性をどう評価するかが、重要なポイントになりそうだ。