「障害を隠さずにいてほしい」両親の思いと一致…5才から健常者と練習し特級クラスに。パラ水泳・南井瑛翔が目指すメダル
至近距離のパラリンピアン13
水泳競技の強豪校として有名な近畿大学の屋内プールは、早朝から練習する大勢の学生たちの熱気に包まれている。逆三角形の体躯で水面を切り裂くように泳ぐのは近畿大学4年生、パラ水泳の注目選手・南井瑛翔(みないあきと)だ。 本人も障害者として自覚がなかったという
5歳からスクールでスイスイと昇級
生まれつき左足首から先がない南井は、5歳で水泳を始めた。「自分の障害を隠さずにいてほしい」と願う両親の思いと、スイミングスクールから出てくる子どもたちを見て「僕も通いたい」と言った南井の希望が偶然にも一致したのだ。 だが最初は泣いてばかりだったという。「行くまでの準備とか面倒くさくて。でも行ったら行ったで楽しかったんで、辞めなかったんでしょうね。週1回だし」 才能の開花は早かった。「上達がめちゃくちゃ早いってコーチに言われました。スイスイクラ昇級して、気づいたら小学3年生で全部の級を取り終わってました」 その後は6年生までずっと1番上の特級クラス。毎週同じことの繰り返しで退屈に感じるほどだった。
パラ水泳を知りハートに火がついた
中学入学と同時に学校の水泳部に入部。「スクールを辞めて、部活に専念しました。練習量は週1回から週6回に増えたので、だいぶしんどかったですね。でも同じ学年に仲間がたくさんいたので、楽しくやれてました」 転機は中3のときだった。水泳部の監督から紹介され、滋賀県で開催されたパラ水泳の選手育成コースの練習に参加。「それまでパラの世界は知りませんでした。自分の足に違和感はあったんですけど」健常者の中で一緒に泳いでひけを取らず、障害というはっきりした自覚はなかったという。 「まわりとは違うなーという、ぼんやりした感じだったと思います」大会への出場を勧められ、パラ水泳の世界への第一歩を踏み出した。 「水泳への熱量が変わりました。パラ水泳っていう、自分も活躍できる場があるのを知って。同じ(障害の)クラスで戦えるのが、すごいおもしろかったです」 中3の9月、初めて全国大会のジャパンパラ大会に出場した。「同じクラスの選手に、初めて負けた。それがすごい悔しくて、この人に勝ちたいって思って火がつきました。それで高校も水泳の強いところに決めました」