「障害を隠さずにいてほしい」両親の思いと一致…5才から健常者と練習し特級クラスに。パラ水泳・南井瑛翔が目指すメダル
練習量を増やし日本代表に
高校に入ると練習量は飛躍的に増加。中学校時代の1日3000mから、夏は6000m冬は7000mへと増えた。「冬は陸上トレーニングを1~2時間してから7000m泳ぐので、特にキツかったです」 得意種目も変更した。小学校から中学2年生まで平泳ぎを専門としていたが、ある日の練習でバタフライを泳いだ際、監督から「お前、バッタ(バタフライ)いいやん。センスあるなー」と言われ、「もうそれであっさり、バタフライに転向しました」
思いがけず東京パラリンピックに初出場
東京パラリンピックへの出場は、予想外の展開となった。当初、記録は伸びてはいたが、派遣記録には届かず、「自分には遠いと思ってました」 しかし新型コロナの影響で東京大会の1年延期が決定。「おっ、これいけるんちゃう? みたいな感じで」その後、タイムを大幅に縮め、代表選手として選出された。「またとない自国開催のパラリンピック、嬉しかったですね」 「東京の選手村での2週間はあっという間でした。最も難しかったのは、レースのない3日間の過ごし方でしたね」集中力の維持とリラックスとのバランスが難しかったと振り返る。 個人では残念ながら予選敗退。だがよい経験になったという。「リレーにも選ばれて、すごい感謝してます」
「僕らは水と仲良くなるのが大事」
水泳の魅力について「ベストが出たときの嬉しさ」を挙げる。「やってきたことがちゃんと結果に出るので」小学校からその積み重ねで自身の記録を更新してきた。 去年初めて100mバタフライの記録が1分で停滞したが、今年ついに59秒3に更新。「やはり結果に出るのはおもしろいです」 この進歩の背景には「教えてもらったことをすぐレースで実践できる適応力が強みかも」と分析する。「気づかないうちに小学生の頃から身についていたのかもしれません」 その適応力を活かし、去年からバタフライのフォーム改善にも取り組んでいる。「上半身と下半身を連動して泳げるようになったので、まだまだ記録が伸びる手応えがあります」と自信をのぞかせる。 トレーニングでは、障害のある側の筋肉も鍛えている。「意識してウェイトトレーニングしているので、今は水着も左右同じ太さを履けています」 さらに、水との関係にも変化を感じているという。「泳ぎ方を意識的に変えたことで、以前は8割の力で出していたタイムが、今は6~7割で出せるようになりました」楽に速く泳げるようになり、「水と仲良くなれている感触がいいですね」と言う。 「水と仲良くならな(笑)。やっぱ敵に回したらダメなんすよ、僕ら」
パリで“ミスターナイン”返上を誓う!
「これまでの世界選手権では9位が続いちゃって、ミスターナインって呼ばれてて」。その名を払拭すべく、パリへの気持ちを高めている。「自己ベストと決勝進出は最低条件です。決勝に残れるタイムは今年は持ってるんで、そこは自信持って挑みたいです。しっかり結果を狙い、メダル争いをする見応えのあるレースをしたい」と決意は固い。 自身の泳ぎについては「200m個人メドレーの中の最初のバタフライ」が注目ポイントと話す。「世界の選手よりも早く入って1番手か2番手でターンすると思うので、そこを見といてほしい」 水と友となって、パリの水面を羽ばたく姿は見逃せない。 取材・撮影/越智貴雄[カンパラプレス]
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