教員の裁判で傍聴席が満員「動員されているのでは…」尾行、質問状、記者会見。取材を重ねて組織の不祥事を明らかにした2か月半
今後、弁護士の検証チームによる調査で、経緯や適法性について詳細な検証がなされることを願ってやまない。 ▽動員方針撤回という結末と今後に寄せて 性犯罪事件では、警察は摘発時の発表を控えたり匿名発表としたりする場合がある。社会の中で事件が認知され得る機会は公判のみ、というケースも少なくない。裁判が公開されていることには、第三者による事案の検証や再発防止に向けた情報収集を可能にするなど、さまざまな観点から大きな意義があることを、取材を通じ改めて強く感じた。 満員を確認した3事件のうち、2事件では横浜地裁で有罪判決が出された。生徒に対する不同意性交罪に問われた中学校教員の男には懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役5年)の判決が、校長室で児童にキスしたとして強制わいせつ罪に問われた元小学校長の男には懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役2年)の判決が言い渡された。どちらも控訴はなく、その後確定した。
被害に遭った児童・生徒や家族の苦痛の大きさは想像を絶する。子どもが、子どもを本来守る立場の教員から性犯罪に遭う悲劇を繰り返してはならないと思う。 取材を進める上では、社内で協力してくれた同僚がいたことや、他社の女性記者らも取材しており同様の問題意識がうかがえたことは、取材を進める上で大きな推進力となった。感謝したい。 一方、忘れてはならないのが、報じる上で被害者側に生じる不利益だ。過去、報道を含む情報拡散により被害者や家族が苦しんだ例があることを、報道機関の一員として肝に銘じなければならないと思う。今回の報道に当たっては、公判に参加していた「被害者参加弁護士」に接触できないケースもあり、被害者側の意向を個々に確認することはできなかったが、事件の詳細を不必要に明かすことのないよう注意を払ったつもりだ。被害者側への配慮を欠かすことなく、再発防止に寄与する事件報道のあり方を模索していきたい。