教員の裁判で傍聴席が満員「動員されているのでは…」尾行、質問状、記者会見。取材を重ねて組織の不祥事を明らかにした2か月半
・ドアが開いたら入室し、1番前の列から座り、席を埋めてください。 ・裁判所内や裁判所近くで、被害者名や学校名などの口外は控えてください。 動員が明るみに出ないように指示しており、身内の事件を外部に知られまいとする強い意志がうかがえる。 「憲法が定める〝裁判公開の原則〟をないがしろにしたのではないか」―。各社から厳しい質問が相次いだ会見は2時間半以上に及んだ。被害児童・生徒の保護目的と言いつつ教員以外から性暴力を受けた場合には傍聴動員をかけていなかったことや、動員による傍聴を業務として扱い職員に交通費を支給していたことも露呈した。 市教委は、動員はあくまで「被害者側からの要望で行った」もので、いずれの事件でも市教委側から提案はしていないと強調。一方、当事者の氏名や、場合によっては犯行場所なども秘匿される公判で、具体的にどのような内容について被害者特定につながる恐れがあったのかという質問には明確に答えず、「結果的に加害者を守っているように見えてしまうかも知れないが、被害者側の視点に立って対応している」などと、理解に苦しむ釈明を繰り返した。 ▽なお疑問多く、続く取材
その後の横浜支局の取材で、市教委が、懲戒処分について公表していた事件の公判には傍聴動員をかけていなかったことも判明した。処分が公表されていれば、被害者側のプライバシーを守る必要はないということだろうか。市教委の対応の偏りが改めて浮き彫りとなった。 市教委は、動員のきっかけとなった被害者支援団体からの要請文書も、一部黒塗りにした上で公開した。 2019年4月21日付の文書の宛先は、組織や部署名でなく、単に「各位」とだけ。本文では「被害者の両親と伴走支援してきた支援者の意向でもあり、性被害傍聴マニアの傍聴を狭めたいという狙いもあります」と説明し、傍聴を「人権研修」と位置付けるよう市教委に求めていた。 また、市教委が動員を指示した「協力依頼」の通知にも記されていた、「関係者が集団で来たと悟られぬようにするための注意点」も、すでにこの文書に列挙されていた。 本当に市教委に宛てた要請文書だったのかどうかや、市教委側がこれを受け取って動員を決めるまでの経緯には、なお多くの疑問が残る。さらに識者からは、動員した職員への給与支給について違法性を問われる可能性を指摘する声も上がる。