【バスケ】約2か月ぶりに復帰の渡邊雄太がアジャストしていくべき2つの壁「ゲームシェイプに戻すためにはゲームをするしかない」【Bリーグ】
日本人選手特有の プレッシャーDEFへのアジャスト
もう一つ、渡邊がアジャストしていかなければならないのが、日本人選手特有の激しいボールマンプレッシャーだ。琉球のガード陣はもちろん、Bリーグでは多くのクラブがガードがフルコートでぴたりとボールマンをマークする運動量を生かしたディフェンスを戦術に組み込んでいる。特に本来ハンドラーではない選手はガード陣にダブルチームを仕掛けられて“ディフェンスのターゲット”にされてしまうことも多い。 試合中、常に前からプレッシャーをかけ続けるようなディフェンスをするチームは、NBAではまず見られない。ゆえに渡邊もアジャストに苦戦するシーンが見受けられる。実際、ゲーム1では4本のターンオーバーを犯し、ゲーム2ではそれを2本にとどめたものの、その2本目は相手のダブルチームでリズムを乱された後に起こったものだ。渡邊は相手のプレッシャーディフェンスに対して何度かファウルではないかとアピールする場面があったが、笛は鳴らなかった。 この点について富樫は「多分この2試合は彼にとってベストパフォーマンスではなかったと思いますけど、でも焦らずに日本のスタイル…日本人選手のディフェンスの仕方っていうのはサイズがない分、NBA選手と違う守り方だと思うので、そこに慣れるまでには少し時間がかかるんじゃないかなと思います」と話していた。コンディションの面とリーグのスタイルへのアジャスト。渡邊はこれから先、チームの勝利を考えながら2つの課題に取り組んでいくことになる。 そんな渡邊に対してトレヴァー・グリーソンHCは「開幕戦して2試合目で雄太がケガをしてしまって、チームとして大きな穴になってしまうのかなと思いました。2年間、彼をNBAで見てきてワークアウトを毎日しているのを見ていた中で、本当に彼の(手足の)長さは特徴的で、リバウンドやボールを奪った後のボールプッシュ。ダンクもできるような身体能力の高さも持っています。それが欠けるとなったので」と危惧していたことを明かしたが、一方で「その間に大きかったのは田代(直希)、原(修太)、金近(廉)、(クリストファー)スミスとウィングの選手がたくさんいたこと。そして、彼らそれぞれがステップアップしてくれました。それはすごく大きかったですし、チームの武器になったかなと思います」と渡邊不在の間にステップアップしたウィング陣の活躍を称えた。その上で渡邊が復帰したことで「ビッグラインナップもできれば、逆にスモールに、今日は彼が5番をやる時間帯も少しありました。彼の柔軟性はやはりチームにとって大きいです」とより盤石なローテーションを組めると自信を見せた。 冒頭の渡邊の言葉を借りるならば、「選手はプレーしてなんぼ」である。ケガをして良かったということはないだろう。だが、渡邊のケガをきっかけにさらに戦い方のバリエーションを増やせたことは、千葉Jにとってプラスの結果を生む可能性が高い。 渡邊はNBAの過酷な環境で6年間も戦い抜いた男である。Bリーグのスタイルにもさほど時間を要さずにアジャストしてくるはずだ。この試合で、今度はディー・ジェイ・ホグが渡邊と同様にシュート後の着地で足首をひねり、コートを後にした。彼の容体は分からないが、今後数試合を欠場する可能性もある。なかなかフルメンバーがそろわない千葉Jだが、現時点でも爆発的な力を見せ付けているだけに、彼らがより成熟し真の意味で完成系になったとき、どんなゲームを見せてくれるのか。その期待値は計り知れない。
写真・文/堀内涼(月刊バスケットボール)