「水道が枯れる日」が迫るメキシコシティ、「デイゼロ」の脅威に直面している世界の都市
老朽化したインフラが枷に、ヨハネスブルク 南アフリカ
国際的な注目を集めている「デイゼロ」シナリオが初めて広く認知されるきっかけとなったのは、2018年に南アフリカのケープタウンで起きた出来事だった。3年間干ばつが続いた後、500万人近くが暮らすケープタウンの給水源であるダムが危機的な限界点に達するまであと数カ月に迫ったのだ。 地元政府は住民に1日の水使用量を約50リットルに抑える厳しい給水制限を課し、家庭での節水を呼びかけた。この給水制限により、ダムの水位は維持され、大雨が降るまで持ちこたえた。 しかし、南アフリカの内陸部に目を向けると、600万人が暮らす経済の中心地ヨハネスブルクでも別の水不足問題が迫っている。住民は定期的に数日から数週間にわたる断水に直面しており、住民は「計画断水」と呼び始めている。これは、電力会社が「計画停電」と呼ぶ、南アフリカで行われる悪名高い停電にちなむ。 ただし、ヨハネスブルクの問題点は飲料水を供給する河川の水位の低さではない。むしろ、「機能不全に陥った自治体」による「老朽化した水道インフラと不十分な水管理」が水不足の原因なのだと、南アフリカ大学地理学部のアニャ・ドゥ・プレシス准教授は言う。
宇宙からも違いが歴然、カサブランカ モロッコ
2024年初頭に6年目の干ばつに直面したモロッコでは、アル・マシーラなどの重要なダムの水が減ったため、モロッコ当局が全国の伝統的な公衆浴場の使用と人気のある洗車ビジネスを制限した。 NASAの衛星画像で上空から見ると、歴史的にカサブランカの一部に水を供給し、この地域の農作物の灌漑に使われてきたアル・マシーラダム周辺の地域は何十キロメートルにもわたって緑が減少している。宇宙から見えるのは乾燥した土地だけだった。 カサブランカの約400万人の住民の生活用水の安全は、北部の別のダムから供給される水と降雨により、なんとか確保された。 2024年6月に着工した新たな脱塩工場はアフリカ最大のものとなる予定で、水の供給量を増加させることが期待されている。しかし、国内の雇用の30%以上を占める農産業への干ばつの影響は、より大きな混乱をもたらす可能性がある。収穫量の減少により、農村部から都市部への内部移住が増加しており、都市の水資源にさらに大きな負担をかけていると、ハッサン2世大学カサブランカ校で気候変動とその水資源への影響を研究するメリエム・タナルテ氏は言う。