なぜ渋野日向子は東京五輪切符をつかめなかったのか…代表内定の畑岡奈紗と稲見萌寧のメダル可能性は?
なぜ結果を出せなかったのか。今回の海外遠征のスタッツを見るとフェアウエーキープ率は他の選手と比べても遜色はない。プロ入り前から師事してきた青木翔コーチから離れ、今年から石川遼の助言を受けてスイング改造に取り組んできた。方向性と安定性を求めたフラットなスイング。昨年までと大きく変わったスイングは賛否両論だが、渋野は「誰から何を言われても構わない。やるべきことをやり切るだけ」と外野の声は一切シャットアウトし、ブレることなくスイングを固めてきた。 その効果は間違いなくあった。多くの選手が深いラフに苦しんだ「全米女子オープン」の予選ラウンド2日間のフェアウエーキープ率は85・7%。それでも予選を通過できなかったのはグリーンを狙う2打目以降の精度の低さだった。安定性を求めた結果、ドライバーショットの飛距離は目に見えて落ちた。米ツアーの総ヤーデージは総じて長い。「全米女子オープン」ではパー4でも渋野が2打目にアイアンを握る機会は少なかった。 飛距離がすべてではないが、短いクラブで打つ方が当然ながらピンは狙いやすい。スピンを効かせることもできる。グリーンを外せば、一番苦手なアプローチが待っている。バンカーショットもある。「全米女子オープン」のパーオン率は55・5%。セカンドショットのミスはボギーに直結した。ドライバーの飛距離がもう少しあれば、アプローチの精度がもう少し上がっていれば、代表レースも違った結果になったかもしれない。 ただ、五輪切符を逃した渋野に後悔はなかった。五輪の先にあった米ツアー本格参戦への思い。大きな目標だった五輪が1年延びたことで、心境にも変化が現れていた。「優先順位が上だったものがアメリカの方に向いてしまった」。コロナ禍に翻弄された1年となったが、「本当に足りないものばかり。早くアメリカで1年間通して戦える選手になりたい」と米ツアーへの思いはさらに強くなったようだ。 畑岡と稲見が出場する東京五輪。地元開催とはいえ世界ランキング上位を占める韓国勢が強力でメダルへの道のりは険しいと言わざるを得ない。