ポケモン人気でも、バトル要素でもない…新リリースされたアプリ「ポケポケ」が、たった1ヶ月で300億円超の莫大な収益を生み出せた“納得の理由”
もちろん、ポケモンというキャラクターコンテンツの人気も重要である。各地にあるポケモンセンターを見てみれば、観光に来たであろう外国人がたくさん詰めかけており、さまざまなグッズをたくさん手にとっている。言うまでもなく世界で大人気のキャラクターコンテンツだ。 TCGのブームがあるうえ、世界的コンテンツのポケモンが掛け合わさっているのだから『ポケポケ』に注目が集まるのは当然だといえる。
日本はデジタルの「ポケモンカードゲーム」に飢えている市場だった
とはいえ、賢明な読者はこう指摘するだろう。「ブームになっているのはリアルなTCGだし、デジタル(スマホ上)の遊びである『ポケポケ』では転売ができないだろう」と。 至極もっともである。『ポケポケ』が2億ドルを超える収益を生み出したのには、日本が置かれている特殊な背景がある。 前出のAppMagicの分析によると、本作の収益のうち約42%が日本からのものだとされている。しかし、日本でのDL数は全体の8%(100万程度)であり、24%を記録した米国には遠く及ばない。にも関わらず、なぜか日本からの強烈な支持があるのだ。 これは、今まで日本向けに「ポケモンカードゲーム」のデジタル版が存在しなかったことが影響していると考えられる。 海外ではPCで遊べるデジタル版「ポケモンカードゲーム」が存在していたのだが、日本向けにはサービスが行われなかった。潜在的な要望があったにも関わらずお金を使う機会がなかったわけで、ゆえに日本で特に大きく盛り上がったのだろう。
「バトル」ではない…巧妙な“沼”への誘い
また、アプリの内容も見事である。本作は起動すると最初にカードパックを剥かせ、どんなカードが入っているのかとドキドキさせてくれる。しかも、毎日無料で2パック開封できる仕組みだ(開封できるようになると通知が来る設定まである)。 TCGというと集めたカードで対戦する部分を思い浮かべる人も多いかもしれないが、最初の一歩は「集める楽しみ」だ。TCGのカード集めはアナログなギャンブルに近いおもしろさがある。レアなカードが当たれば嬉しいし、ポケモンに愛着を持っている人ならば好きなカードは集めたいものだろう。 基本プレイ無料のゲームにおけるガチャがこれだけ人気になっていることを考えれば、デジタルの遊びだとしてもレアカードが当たるのは嬉しいものだ。何より『ポケポケ』ではデジタルならではの表現もカードデザインに取り込んでいる。 ガチャに類する遊びはソーシャルな遊びでもある。ガチャで何を引いたかがSNS上の話題になるように、TCGも開封報告が盛り上がる。 『ポケポケ』では「ゲットチャレンジ」というシステムがあり、これは開封結果を公開しつつ他プレイヤーと共有するものだ。任意の開封結果を共有できるわけではないのだが、“当たり”を引いたユーザーは他者から褒められる仕組みになっている。 最初は無課金で遊ぼうと思っていても、コレクションの楽しさに目覚めて課金することになる流れはよく理解できる。毎日無料で2パックという設定もよい。これだけでは物足りないのでもう1パック増える月額課金をしたくなるし、ソーシャルな遊びを加速させるため、あるいは対戦に必要なカードを求めてもっとカードを引くようになっていくだろう。 なお、『ポケポケ』は課金の上限を定めており、1日で最大120パックまでしか引けない。節度を持って遊ばせる姿勢もきちんと見せているわけだ。 スマホでTCGアプリを出す場合、やはりカジュアルなプレイヤー層が多くなるだろう。ゆえにコレクションを前面に押し出した『ポケポケ』は見事である。 記事執筆時点の『ポケポケ』は拡張パックが3種類しかないが、2024年内に新しい拡張パックが追加される予定である。また、一部のカードをトレードできる機能も追加されるそうだ。バトルに関しても今後要素が充実していくだろう。 まずはコレクションからはじめ、カジュアルな層をTCGの沼へと沈める導線がよくできている。『ポケポケ』は見事であると同時に恐ろしさも感じるゲームアプリといえよう。
渡邉 卓也