銀河140個分。観測史上最大のブラックホールジェットが発見される
ブラックホールジェットが銀河を育てる?
論文の共同著者であるハートフォードシャー大学の天体物理学者、マーティン・ハードキャッスル氏は記者会見で以下のように述べました。 ポルピュリオンのような構造体が生まれるには、非常に強力な降着が起きる必要があります。例えば、他の銀河との合体によってブラックホールに大量のガスが供給されるというようなことが、必要なのかもしれません。 また、共同著者であるカリフォルニア工科大学の天文学者、ジョージ・ジョルゴフスキー氏は、リリース内で以下のように述べています。 天文学者は、銀河とその中心のブラックホールは、互いに影響し合いながら進化していくものだと信じています。ブラックホールジェットが大量のエネルギーを放出し、それが銀河自身の成長や、周辺の銀河の成長にも影響を与えるということです。この発見は、ジェットがこれまで考えられていたよりもはるかに広範囲に影響することを示しています。 同チームは、以前「アルキオネウス」という名のブラックホールジェットも発見しています。こちらも神話上の巨人にちなんで名付けられ、その長さは銀河系約100個分でした。 オーイ氏によると、ポルピュリオンやアルキオネウスのようなジェット流は、宇宙空間を磁化します。そして、非常に大量のエネルギーを放出し、局所的には、銀河と銀河の間に広がる空間に存在している物質、銀河間物質を100万度にまで加熱する可能性があるとのこと。さらに、コズミック・ウェブの間にある広大な空間に磁場を生成、放出する可能性もあるとのことです。もうスケールがデカすぎて何がなんだかわかりません。
新たな発見が期待される、ブラックホールジェットの研究
オーイ氏は、 宇宙のあらゆる場所で磁場が形成されていることが観測されています。銀河全体が磁化されているだけでなく、コズミック・ウェブのフィラメントや、それらのフィラメントの間にある空隙も磁化されています。 この大規模な磁化現象は非常に注目されています。宇宙誕生について、何かヒントが隠れているかもしれません。 と言います。 宇宙を調査するための新しい観測装置、スクエア・キロメーター・アレイにより、さらなるジェット流の発見が期待されています。また、コンピュータビジョンやAI技術を使った画像解析の自動化によって、さらに多くのブラックホールジェットが見つかっていくでしょう。 チームはすでに約1万のジェット流を発見していますが、これは「発見可能なもののごく一部に過ぎない」とオーイ氏は述べています。宇宙には10万から100万のブラックホールジェットが存在する可能性があると推測されています。
小野寺しんいち