82歳料理家<村上祥子>の原点。夫の社宅で始まった料理教室のきっかけは「おせちのお裾分け」
◆異国の食との出会い 私は子どもの頃から無類のコンテスト好き。 小学生のときに『少女倶楽部』にお菓子のレシピを投稿したことに始まり、前述した「ふっくらパンコンテスト」など、事あるごとにチャレンジしていました。 専業主婦から料理教室の先生を始めた私にとって、料理コンテストは腕を磨き、それを確かめる絶好の機会だったのです。 自ら宣伝をするわけでもないのに、生徒さんはどんどん増えていきます。 家庭料理の基本を教えていても、何かおもしろいワクワクするようなレシピも加えてみたい。 それを料理の専門家である審査員の方々に評価してもらいたいと思いました。 コンテストの応募を重ねるにつれて、私はその「傾向と対策」を練るようになりました。 コンテスト自体の目的やコンセプト、また審査員の顔ぶれなどを確認して、レシピの方向性を決めるのです。 「この先生がいるなら、ちょっとフレンチの要素も入れようかな」「簡単だけど、『わあっ!』と喜ばれるようなインパクトも大事ね」といった具合です。 カルフォルニアに本社のあるアーモンド会社が主催する料理コンテストにも、そんな調子で応募しました。 言うまでもなくカルフォルニアのアーモンドを日本に普及させるためのコンテストです。 当時の日本では、今のようにアーモンドは定着していませんでした。 条件はお菓子ではなく料理のレシピを作ること。 いろいろと考えては試作を繰り返し、できあがったのが『ポークハワイアンアーモンドクリーム添え』。 パイナップルジュースで煮込んだ角切り豚バラ肉に、牛乳とアーモンドで作ったクリームソースをかけます。 アーモンドの形は見えないけれど、ソースにはしっかりとその風味と味が感じられるレシピです。 オリエンタルな風味も入れてみようと、豚肉をパイナップルジュースで煮た自信作でした。 ※本稿は『料理家 村上祥子82歳、じぶん時間の楽しみ方』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
村上祥子