【鹿児島・沖縄の糖業―迫られる変革】 喜界・生和、季節工頼み脱却
鹿児島県奄美群島内の製糖5社6工場のうち、喜界島、徳之島、沖永良部島の3社4工場は従来からの3交代制を維持する。ただし、いずれも島の働き手減少は避けられぬと見ており、工場内の省力化や、1人が複数工程の対応能力を備える多能工化などを進めている。製糖期人員の安定確保を念頭に、社員の人事制度を見直した会社もあった。 喜界島の生和糖業喜界工場は20~30年前から工場内で隣接工程の統合を進めてきた。そして2021―22年期には、全工程の監視・操作機能を集中制御室に集約した。工員は、工場内情報を共有する無線機とタブレット端末を持ち、状況に応じて現場に出向く。 生和糖業はこの20年で、製造分野は社員も季節工も大幅に減らした。吉田克成総務部長は「人員削減には反発もあったが、いかんせん島の人口は減っていく。高い給料を払うことで、会社は採用できたとしても運送など関連分野で人がいなくなればキビ産業という全体が動かなくなる。会社の中で頑張って対応することで、他の分野に人を回せるのではないかということも考えて進めてきた」。 現在社員42人。山倉正和工場長によると、23―24年期の製造部門は社員30人、季節工3人。季節工は約30年前までは約100人、約20年前は約30人だったという。 一方、季節工に頼らぬ製糖は、社員の負担増を伴う面もある。吉田総務部長は「多能工育成という点は苦労している。従来は特定の分野を深くという形だったが、今は広くさまざまな部門にある程度対応できる人材を育成していかなければならない。突発的なことが起こった時に対応できる人材は、まだ限られている」。山倉工場長によると、洗缶や原料投入などの外注先確保も年々難しくなり、社員が対応せざるを得ない分野が広がっていく傾向にある。 生和糖業は今、島の農地集約の促進にも力を注いでいる。キビ農家や輸送事業者の減少を見越した取り組み。吉田部長は「基幹作業を引き受ける農家や集荷事業者の効率化につなげたい」と話した。