【#佐藤優のシン世界地図探索75】モスクワから見た日本の「自民党総裁選」
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――米国に日本産の地対空ミサイル「パトリオット」を売って、ここのところロシアには評判の悪い日本ですが、モスクワでの評判はどうなんですか? 佐藤 日本の評判は悪くないですよ。民衆にとって日本の影は薄いです。そして、エリート層には「岸田政権って不思議だよね」となっています。 ――ロシアのエリート層にとって、"岸田深海魚政権"はどこが不思議なんですか? 佐藤 「なぜ岸田(文雄)さんは、安倍(晋三)さんや森(喜朗)さんのように普通にやらないんだろうね」ということです。 ――というのは? 佐藤 日本はウクライナに殺傷能力のある兵器を送っていません。さらに、ロシアから天然ガスも海産物も購入しています。にもかかわらず、「なぜロシアを悪し様に罵(ののし)るのかね?」ということです。 岸田政権は時々、「プーチン大統領を最大級の言葉をもって非難する」と声明を出すじゃないですか。それが行動と伴っておらず、不思議に感じるわけです。 ――なるほど。 佐藤 もちろん、米国の同盟国だというのは分かっています。第二次世界大戦で、米国に散々な目に遭わされて、米国の子分になっているのは理解しているんです。 しかし、それは安倍さんの時も一緒だったじゃないか、と感じています。「日本が体を躱(かわ)している」ということは普通に言っていたじゃないか? なぜ体を躱しているのに、あたかも米国と一緒になっているような発信をするのか、そこが理解できない、ということです。 ――要するに、言ってることとやってることが別々だと。 佐藤 そういうことです。そして「我々は基本はやっていることに注目している。すると、G7の中で一番マシ」という感覚です。そこはロシアのエリートはよく見ています。 ――でも、岸田さんは辞めてしまいます......。 佐藤 辞める必要はないはずなんですけどね。ただ、おそらくこういうことだと思います。まず、麻生(太郎)さんの支持はやっぱり得られませんでした。 ――何度か会ったらしいですけど、ダメだったみたいで。 佐藤 なので、5年後を計算したのだと思います。 ――5年後ですか?