高まるマスク氏のトランプ次期政権での影響力と難航する財務長官人事
マスク氏は外交にも口を出すか
1億8,000万ドル(約280億円)を献金するなど、米大統領選でトランプ氏を強く支援した電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)について、次期トランプ政権での影響力がかなり高まる見通しとなってきた。 トランプ氏は既にマスク氏らを、政府の無駄な支出の削減や規制緩和を進める「政府効率化省(DOGE)」のトップに据える考えを示している(コラム「トランプ次期政権でイーロン・マスク氏が「政府効率化省(DOGE)」を主導:トランプトレードは修正されるか」、2024年11月14日)。 さらにトランプ氏は、マスク氏に外交政策にも関与させる兆候を見せている。複数の米メディアによると、マスク氏は、ウクライナのゼレンスキー大統領やトルコのエルドアン大統領との電話協議に同席した。またトランプ氏が大統領選挙後に唯一対面で会った首脳であるアルゼンチンのミレイ大統領との面会にも、マスク氏は同席したとされる。 また、マスク氏は11月11日に、イランの国連大使と単独で面会した、と米紙ニューヨーク・タイムズが伝えている。ロシアのプーチン大統領や周辺の高官と2022年から2024年にかけて定期的に接触していた、ともウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。 米国のローガン法は、アメリカ合衆国と争っている外国政府に対し、連邦政府の許可がない個人が交渉することを禁じている。違反者には罰金または禁錮が適用される。同法には、政府の意図に反して個人が外国と交渉することを防ぐ意図がある。マスク氏の外交の一環とも見える行動、特にイランの国連大使との単独面会は、ローガン法に反しているとの批判もある。 トランプ氏とマスク氏との個人的な親密さも伝えられている。マスク氏は、大統領選挙後はフロリダ州のトランプ氏の私邸「マール・ア・ラーゴ」で多くの時間を一緒に過ごしているとされる。16日にはニューヨークで開催された格闘技イベントを、ともに観戦した。19日には、マスク氏が率いる宇宙開発企業「スペースX」が開発する大型宇宙船の試験飛行をともに視察しており、両者の親密度合いは強まっている。 マスク氏は自身をトランプ氏の「最初の相棒」と表現するが、マスク氏がトランプ氏の政策面に大きな影響を及ぼすことを懸念する声も出ている。