無理は禁物。子どもの心の回復のために、周りの大人がするべき聞き方・話し方
子どもの話を理解し、共感する姿勢をもつことが大切
トラウマは、子どもが自分の感情を理解し、コントロールする能力を損ないます。感情の理解・管理がむずかしい子どもは、引き金がひかれると、なぜそうなるのかわからないまま、ただひたすら強烈にいやな感じを経験します。そしてそのストレスを身体や行為で表現するのです。 発達の途上にある子どもにとって、行動はコミュニケーションの手段でもあります。子どもが言葉を使って感情や経験をわかちあうコミュニケーションができるようになるまでには、子どもに接する大人が子どもの行動の水面下にある感情を照らし、言葉に置き換えて子どもに返すというくり返し(感情の反映)が必要です。 行動面の問題を解決すること、させることを急ぎがちですが、もっとも大切なのは、ただそばにいて、子どもが自分の感情のいろいろに気づき、理解し、調節するのを助けることです。子どもの話を聞き、理解し、共感し、経験を認めて重荷をわかちあうことが子どもの力になるのです。 【指示する前に必要なこと】 ●子どもの状態と「波長合わせ」をしていく 子どもの状態をトラッキングし、波長合わせをしていきます。すると、子どもの行動の水面下にある本当の気持ち(「本当は○○したかった」など)が現れてきます。複数あればその気持ちを尊重して、ただ共にいる時間を大切にします。 ●子ども自身が感情に気づき、それを名づけ、理解し、調節するのを助ける 行動の意味を確かめたいときは、指示ではなく、質問をしていきます。ただし「なぜ」「どうして」という言葉は、子どもが責められていると感じやすいので、使わないようにします。 感情を認識しにくい子どもには、たとえば「今、眉をひそめているけど、どんな気持ち?」「質問されていやな気持ちになったのかなと思ったんだ」と、子どもに現れている変化のサインを伝え、どんな気持ちか問いかけます。子どもが答えにくそうだったら、想像した気持ちを伝えてみて、ぴったりするか聞いてみます。 ●よりよい対処のしかたをいっしょに見つける 同じような気持ちになったとき、「イライラしたとき、いつもはどうするの?」「どうやったら、叩かないで相手に伝えられるかな?」などと、今までどう対処してきたのかを聞いてみます。自分のなかにある強さに目を向けさせ、よりよい対処のしかたをいっしょに考えていきます。