無理は禁物。子どもの心の回復のために、周りの大人がするべき聞き方・話し方
友だちとトラブルばかり起こしている、大人に対して反抗的、拒食や過食……。こうした「困った子」は、実は本人が困っている子です。過酷な体験で生じた心の傷=「トラウマ」から、問題行動を起こしているのかもしれません。 【漫画】「悪魔の子の証だよ!」新興宗教にハマった母親が娘に言い放った信じ難い一言 わかりにくいのは、なにがあったかを子ども自ら話すことが少ないからです。トラウマは、先の人生に大きな影響を及ぼすことさえあります。ですから周囲は、子どもの回復のためになにができるかを考え、行動していくことが必要です。 そこでこの連載では、『子どものトラウマがよくわかる本』(白川美也子監修、講談社刊)を基にして、当事者はもちろん、子どもにかかわるすべての支援者にも知っておいてほしいことを、全8回にわたってお伝えします。 支援者が子どもや家族をコントロールするのではなく、双方が力を与え合い、この世に生きている幸せを共に感じられる。そんな瞬間を増やすのに役立つヒントをぜひ見つけてください。今回は、子どもの回復を支えるためにできることについて学んでいきましょう。 子どものトラウマがよくわかる 第7回 〈災害や大切な人との死別、子ども同士や先生からのいじめ……トラウマをもつ子どもをさらに打ちのめす出来事〉より続く
「こうするべき」と決めつけず、子どもといっしょに考える
子どもの回復を支えていこうとするとき、「こうしたほうがよい」と諭したくなることもあるでしょう。しかし、支援する大人が一方的に子どもを導こうとする姿勢は、支配関係に通じます。回復を促すどころか、むしろ再びトラウマ的な関係に陥っていくおそれがあります。 トラウマのある子どもの回復を促すために必要なのは、子どもといっしょにどうすればよいかを考えていく姿勢、つまり「協働」の姿勢です。子どもの人生の主人公は子ども自身です。家族であれ専門家であれ、その座を奪って君臨することは避けなければなりません。 自分の選択が最大限に尊重されるという経験は、子どもが無力感から脱し、自分で自分をコントロールする力をつけていく糧になります。 【対応の際に守りたいポイント】 ●支援が支配につながらないようにする たとえば虐待を受けてきた子どもは、対等な関係性の経験がほとんどありません。1対1での関係だけでなく、子どもにかかわる組織としても、支配的な関係が再現されないように注意します。 ●子どもの強みに焦点を当てる 子どもの長所を認め、子どものしてきたことにポジティブな意味を見出し、将来のよりよい選択につなげていきます。 ●「協働」の姿勢でのぞむ トラウマが与える「無力感」から抜け出す方法を、子どもといっしょに考えていきます。先の見通しや、起こりうること、望ましい結果を得るためにどんな選択肢があるかをいっしょに考え、最終的な選択は子ども自身に任せるということをくり返していきます。 ●情報をわかりやすく示す 支援者が、これからしようとしていることについてわかりやすく説明します。たとえば、虐待などで子どもの一時保護が必要と考えられる場合などは、どんなところで過ごすのか、そこでなにをするのかなど、わかりやすい情報を提供し、次になにが起こるか予想できるように手助けします。 ●組織全体で取り組む トラウマに対し、一般的な知識をもってかかわっていくようなかかわり方が必要なのは、実際に子どもの相談にあたる人だけではありません。 たとえば病院や施設では受付の人、学校では、他のクラスの教員なども含め、組織全体でトラウマへの理解を深めていきます。子どもにかかわるすべての人が、子どもの気持ちへの配慮を忘れずに接していくことが、子どもの安全・安心につながります。