センバツ2024 近江 主体性養う「係」制度 道具管理、掃除などに責任 /滋賀
今春のセンバツに出場する近江では、日々の練習や遠征試合を円滑に進めるために準備や道具管理などを担う56の「係」を決め、一人一つ以上受け持っている。怠ればチームのリズムが崩れるため、どの係も大事な役割だ。その自覚が近江高野球部員としての誇りを育てている。【礒野健一】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち ◇今では56種に 係制度は2010年から始まった。それ以前も道具管理などは一部の部員で分担していたが、やらない部員との不公平感もあり、練習場所の掃除も含め36係を設け、全部員が1人1係を担当することにし、当初はコーチが担当を決めていた。 係の在り方が変わったのは17年から。部員から改善案が出され、係の数が46に増えた。武田弘和部長(42)は「準備や掃除も練習の一環という意識が芽生え、係の仕事にも熱量が増していった」と振り返る。担当も選手たちで決め、毎日手入れが必要な道具の管理やトイレ掃除など、人が嫌がる係ほど中心選手が担うようになっていった。プロ入りした選手で見ると、18年夏8強時のエース、林優樹投手(楽天)はアイシング道具管理と一塁側ブルペン掃除、22年春準優勝時の主将、山田陽翔投手(西武)は、全体統括とベンチ掃除を任された。 現在は係の数も56に増えた。練習が終わるとそれぞれが道具の手入れや掃除に取りかかるが、やらされている印象はない。1年時から一塁ベンチ掃除を担当する福田虎哲選手(2年)は「今では普段の生活でも整理整頓に気を使うようになった」。トイレ掃除係の大原悠太選手(同)は「汚いところをきれいにするのは気持ちいい。任されることで上級生の自覚も出てきた」と笑顔を見せる。ベースなどの管理を任されている相原悠人選手(同)は「水とたわしを使うので冬場は大変だが、係での心がけがプレーにもつながる」と力を込める。 武田部長は「より良いやり方を自分で考えることも大事。それが逆に非効率的になるとしても、失敗することで成長もできる」と見守る。きれいな道具やグラウンドを選手たちが主体的に維持することで、近江の野球は強さを増していく。