おぎぬまXのキン肉マンレビュー【コミックス第40巻編】~悪魔と正義に再び光を灯す"ゆでマジック"~
●バトル作品の背負いし宿命へのアンチテーゼ とはいえこの先、複雑な不安もあります。なぜならキン肉マンはかつての最終章「キン肉星王位争奪編」で名実ともに宇宙最強の地位を確固たるものとしたはずです。そんな彼に、今さらどんな相手をぶつければ、ピンチを迎えるような面白い試合になるというのでしょうか? 無論、ブランクを理由にキン肉マンが弱くなったなんて理由も受け入れられません。キン肉マンに匹敵する強敵との試合は見たい! その一方で、キン肉マンが積み重ねてきたことを蔑(ないがし)ろにして欲しくない......というジレンマがあるのです。 しかしその解決法はしっかり用意されていました。キン肉マン復帰戦の対戦相手は、赤ちゃんのような異様な容姿の完璧超人ピークア・ブー。 一見、ギャグ展開で終わらせるのかと思いきや、これがとんでもない強敵でした。その正体は"急成長超人"。つまりまっさらの無垢な赤ん坊が周りの大人から言語や習慣を猛スピードで学習していくように、対戦相手の能力すべてをスポンジのようにどんどん吸収し、やがて試合中に追いつき超えていく。 そうなるとその相手は強ければ強いほど、ピークア・ブーは厄介な相手に成長を遂げるというわけです。これはなるほど、そう来たかと唸らされました。 そして、ピークア・ブーは48の殺人技など、キン肉マンの高等技をどんどんマスターしていきます。やがては最強奥義マッスル・スパークさえも使いこなしそうな勢いで...。しかしこれに対するキン肉マンのアンサーが実に見事でした。 センセーショナルに満ちた新技、高等技、応用ばかりに目が行く者は、基礎をおろそかにしてやがて土台から崩れていく。そしてそう説くキン肉マンがピークア・ブーに最後に仕掛けたフィニッシュはなんと、地味な基礎技の集合体"風林火山"という技だったのです。 結果、キン肉マンの読み通り土台部分の勝負で負けたピークア・ブーはこの技で陥落。かくしてキン肉マンは苦戦の末に見事、復帰戦で勝利を飾ることができました。