「惨敗してもおかしくない展開」帝王・山田裕仁氏が眞杉匠の“逆転劇”に驚がく/共同通信社杯競輪・決勝
先頭に立った北津留選手を古性選手が直後から追う態勢で、最終2センターを通過。古性選手の後ろは内の深谷選手と外の眞杉選手が併走状態で、さらにその後ろに恩田選手と南選手という隊列です。最終4コーナーでは恩田選手がさらに差を詰めて、最後の直線の入り口で眞杉選手の番手に復帰。先頭で粘る北津留選手の外から、古性選手と眞杉選手が迫るというカタチで、長い最終直線に突入します。 北津留選手もいい粘りをみせますが、古性選手と眞杉選手が外からジリジリと差を詰めて、30m線では3車がほぼ横並びに。その後ろから深谷選手も前を追いますが、勢いがいいのはイエローライン付近を伸びる恩田選手のほうです。北津留選手を捉えた後も古性選手と眞杉選手のデッドヒートが続くかと思われましたが、最後のひと伸びをみせた外の眞杉選手がジワッと前に出て、先頭でゴールラインを駆け抜けました。
後方8番手からの驚異的な逆転勝利
最終周回の2コーナーを回ったところでまだ後方8番手という、絶望的なポジションから勝利をもぎ取った眞杉選手。走り慣れたホームバンクで、仕掛けてからまったくロスなく前との差を詰められたという“運”に恵まれた面もあったとはいえ、あの位置から捲りきったのは驚異的ですよ。レースの組み立てとしては失敗で、惨敗していてもおかしくない展開だったと思います。 このレースで眞杉選手がみせた気持ちの強さは、地元ビッグに向けて作りあげてきた「デキの確かさ」に支えられてのもの。準決勝でみせた圧巻の走りは、大きな自信に繋がったことでしょう。松戸・サマーナイトフェスティバル(GII)に続くビッグ制覇によって、獲得賞金ランキングは6位にまで上昇。怪我の影響もあって出遅れていた今年でしたが、これで2年連続でのKEIRINグランプリ出場がみえてきましたよ。 2着は古性選手で、このシリーズはオール2着という結果に。この決勝戦でも、レース展開を読んで素晴らしい立ち回りをみせているのですが、いかんせんデキがともなわなかった。好調時の古性選手であれば、この展開ならばあっさりと北津留選手を捉えて、眞杉選手の追撃もギリギリ封じていたように思います。眞杉選手が絶好調といえる状態で臨んでいただけに、その差は大きかったですよね。 惜しみない称賛を送りたいのが、北津留選手に競り勝ち3着に食い込んだ恩田選手です。眞杉選手の番手を回るとはいえ、この強力なメンバーにあって、ファンの評価は正直なところ低かったと思います。しかし、眞杉選手に必死に食らいつき、口があいてからも最後まで諦めずに追いすがり、最終的に3着という結果を出した。相手関係や展開を考えれば、眞杉選手に勝るとも劣らない“力走”だったといえます。 果敢に主導権を奪おうとした九州勢や、それを強気な走りで叩きにいった郡司選手など、他のラインも「優勝のためにやるべきこと」をしっかり果たしている。残念ながら好結果こそ得られませんでしたが、どのラインや選手を応援していた人であっても、相応の納得感が得られたのではないでしょうか。全員が勝つために死力を尽くした、特別競輪の決勝戦にふさわしい熱戦でしたね。 そして…この結果でがぜん面白くなったのが、KEIRINグランプリの出場権争い。弥彦・寛仁親王牌(GI)と小倉・競輪祭(GI)を残しているので、賞金ランキングの7位につけている脇本選手や9位の新山選手は、このままだとかなり危うい。現在10位以下の選手もタイトル獲得での出場権獲得を狙ってきますから、ここからの戦いはさらに熾烈なものとなることでしょう。さらなる盛り上がりに、ぜひ期待したいですね!