見えない汚染。今こそ【PFAS】について知ろう
不可視なPFAS。汚染の実態とは
環境省が2022年に実施した調査によると、沖縄を含む16都府県の111地点で基準値を超えるPFASが検出された。沖縄の水道水がPFASで汚染されていることが初めて公表されたのは、2016年1月。それは県の中南部に位置する北谷(ちゃたん)浄水場で、県民約45万人に供給される水だった。北谷浄水場の比謝川取水ポンプ場の上流では、嘉手納基地内を流れる大工廻(だくじゃく)川が合流する。当時この川から、1,462ng/Lという高濃度のPFASが検出された。汚染源は、1970~80年代に同基地内の大工廻川脇で使用されていた消火訓練場である可能性が極めて高いと見られている。 その後沖縄県が実施した調査の結果、普天間基地下の湧き水・喜友名泉(ちゅんなーがー)では最大2,000ng/L、普天間第二小学校グラウンドの土壌からは6,600ng/kg、嘉手納基地周辺の井戸群では最大1,870ng/L、このほか、嘉手納弾薬庫や陸軍貯油施設下流の天願川、キャンプフォスター周辺の湧き水、キャンプハンセンから流れ出る地下水などでも同様に高濃度のPFASが検出された。 そして2020年4月10日、普天間飛行場の格納庫にある火災報知器が誤作動を起こし、大量の泡消火剤が噴出する事故が起きた。合計約14万3,830リットル、ドラム缶719本分の消火剤が排水溝を通じて基地外に漏出し、高濃度のPFASを含むふわふわの白い泡が、宜野湾市の大謝名(おおじゃな)地区へ流出した。鈴木さんはこの漏出事故をニュースで見たのをきっかけに、沖縄でのフィールドワークを始めた。 「飛行場を作るためには真っ平らな土地が必要で、戦後米軍が接収して基地にしました。普天間基地も嘉手納基地も高台にあり、基地内では定期的に消火訓練が行われます。そこで泡消火剤が流出するたびに高度の低い方へ、つまり人びとが住んでいる海側に流れていきます。上にある米軍基地から、下で暮らす住民へ。まるで沖縄の問題を象徴するかのような地理的構造になっています。 普天間基地の漏出事故は白い泡として可視化されましたが、水道水に含まれるPFASは目に見えないし、においも味もしません。沖縄の基地問題も、本土に住む私たちにとっては見ようとしなければ見えてこない。どちらも“不可視な存在”であるからこそ、伝えなければならないと思いました」