米国で注目を集める大人の失踪、専門家が現象を解説
なぜ大人は逃げるのか
専門家は家出について、怒ったり、誤解されたと感じたりした幼い子どもがよくする脅しだと言う。人は通常、年を取るにつれて、感情を律する方法を学ぶ。しかし、すべての大人がそれをできるわけではなく、その技術がなければ、生活の変化や不安が一人では手に負えないほど大きくなる場合がある。 クック氏は、自己制御の方法を知らない人は本当に悲惨な選択をしてしまいかねないと話す。多くの人は大人になる過程で自己制御の仕方を教えられていないという。 2023年にはFBIのデータベースに未成年者と成人合わせて56万3000件以上の行方不明届が記録された。 これらの事案の約半数では、失踪を誘拐か自発的なものかに分類するのに役立つ任意の基準が使用された。このデータによると、事案のうち約95%が家出と分類された。 家出した人の中には、刺激が多すぎることに反応している人もいるかもしれないという。 「毎日毎日神経に負担がかかっていると、いつかは、十分に休息を取り、自分の生活で起きていることを管理できると感じている人と同じ判断を下す認知能力がなくなる」とクック氏。脳に負担がかかりすぎた人は、自分の生活から切り離され始め、最終的には他人に共感する能力を失いかねない。
圧倒される時代
米疾病対策センター(CDC)によると、近年、不安やうつ病の症状を訴える米国成人の割合が大幅に増加している。22年には18歳以上の約5人に1人が2週間の間に不安症状(18.2%)またはうつ病の症状(21.4%)を経験した。 クラーク大学の発達心理学者で心理学の上級研究員であるジェフリー・アーネット氏は不安とストレスは健康に重大な影響を及ぼす可能性があり、普段ならしないようなことをやる気にさせる可能性があると話す。 うつ病は通常、ある種の倦怠(けんたい)感を伴い、何もする気が起きないが、不安とストレスはその逆で、その状態を和らげるために何かをしたいと思わせるという。 専門家によると、不安とストレスはコミュニケーションやセラピー、または薬物療法で管理できる。 アーネット氏によると、不安レベルは18~29歳の人々のほうが特に高く、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行がメンタルヘルスに影響を及ぼしている。クック氏もこれに同意し、ミレニアル世代とベビーブーマー世代の経済格差が一因となっていると指摘した。