米国で注目を集める大人の失踪、専門家が現象を解説
(CNN) ウィスコンシン州出身の家庭的な男性。ハワイ州出身のアーティスト。メリーランド州出身の名門大学の卒業生。文字通り3人は異なる人生を歩み、異なる背景を背負っていた。しかし、この3人は予期せぬ道を行き、仕事や日常生活、家族、友人の前から姿を消した。 【画像】コバヤシさんの行方不明を伝える貼り紙 ライアン・ボーグワード被告は、警官に対する業務妨害の容疑で起訴された。同被告はカヤックの事故によって自身が死亡したと偽装し、妻と3人の子どもを残して東欧へ逃亡していた。 ハンナ・コバヤシさんは今月に入り、自発的に失踪したと判断された。 ルイージ・マンジオーニ被告は保険会社ユナイテッドヘルスケア最高経営責任者(CEO)のブライアン・トンプソン氏が殺害された事件で、殺人罪に問われている。マンジオーニ被告の母親は先月、被告が行方不明になったと警察に通報していた。 米連邦捜査局(FBI)のデータによると、米国では毎年何十万人もの成人が行方不明になっている。元FBI副長官アンドリュー・マッケイブ氏によると、中には故意に失踪する人もいるという。 マッケイブ氏はCNNに「大人になると、自分の生活を捨ててどこか別の場所で新たに始めるか、何かを探しに行くか、それが何であれ自分で決められる」と語った。 同氏は、仕事のプレッシャー、金銭問題、健康問題、恋愛関係、SNSなど、逃げる理由はたくさんあると続けた。これらのさまざまな事象は不安やストレスの増加につながる可能性があると専門家は指摘する。これらの問題に対処する情緒面での手段を持たない人の中には、今の生活を捨てて新しい生活を始める方が簡単だと感じる人もいるという。 法執行機関はこうした個人を自発的な行方不明者として指定することが多い。行方不明となっていたハワイのコバヤシさんは今月、自発的な失踪と断定された。この前にはロサンゼルス警察がコバヤシさんについて米国とメキシコの国境まで移動し、単独でメキシコに入国したと発表していた。 家族は、コバヤシさんは「無事に発見された」と発表したが、米国には戻っていない。家族の声明では、コバヤシさんがどこにいるのか、家族がどのようにして安全だと判断したのかは明らかにされていない。 コバヤシさんの家族は、感謝祭の数日前にロサンゼルスまで娘を探しにでかけ、自殺した父親の死に今も動揺している。 米国人の失踪が世間の注目を集め続ける中、不安を専門とする臨床心理学者ローレン・クック氏によると、一連の事件は必ずしも偶然ではない。充実した生活を送っている大人が、知っていることすべてから離れることについて受動的な考えを持つことは珍しくないという。ロサンゼルス警察によると、ハワイを離れる前にコバヤシさんは現代のテクノロジーから離れたいという願望を口にしていた。 クック氏は、極端ではあるが、最近の失踪の話は「人々が感じている大きな圧倒感」を物語っていると話す。人々はつねに自分の問題に対する簡単な解決策を知っているわけではないので、すべてから逃げ出したいと考えるのだという。