PS4『デス・ストランディング』5周年。全世界で1000万人以上の配達依存症を生み出した、小島秀夫監督が新スタジオで初めて手掛けた作品【今日は何の日?】
※本記事は、2023年11月8日にアップした記事を再編集したものです。 未来を運び、世界をつないでいく 【記事の画像(10枚)を見る】 2019年(令和元年)11月8日は、プレイステーション4版『DEATH STRANDING』(デス・ストランディング)が発売された日。本日で発売から5周年を迎えた。 『デス・ストランディング』は、ソニー・インタラクティブエンタテインメントから発売されたアクションゲーム。ゲームデザイナーの小島秀夫監督が新たなスタジオ“コジマプロダクション”を立ち上げて初めての作品ということもあり、世界中のゲームファンから大いに関心を集めた。 登場キャラクターを世界的な名優たちが演じている点も大きな話題を呼び、3Dモデルのクオリティーの高さに度肝を抜かれたなんて人もいるはずだ。筆者は『ウォーキング・デッド』を全話観るほどノーマン・リーダスが好きだったので、右手のタトゥーまで再現してあるのについうれしくなってしまった。 マッツ・ミケルセン、レア・セドゥ、マーガレット・クアリー、ギレルモ・デル・トロといった錚々たるメンツに加え、小さいころ夢中になった『地上最強の美女バイオニック・ジェミー』のリンゼイ・ワグナーまで出演していて衝撃だった。 本作をジャンル分けするなら確かにアクションゲームではあるのだが、その内容はいささか風変わり。おもな目的は“依頼された荷物を指定された場所に届けること”で、ゲーム的に言うなら“お使い”に特化した内容になっている。 プレイヤーはオープンワールドの広大な世界を舞台に、山を越え谷を越え、困難な道のりを踏破して荷物を届けるわけだが、小島監督が得意とするSFストーリーによる味付けがゲームのモチベーションを大きく上げてくれている。というのも荷物運びというシンプルな行為がアメリカを、ひいては世界の人々を救うことにつながっていくのだから筆者などは壮大過ぎて正直驚いた。 そう遠くない未来のアメリカでは“デス・ストランディング”という現象によって、都市が引き裂かれ、分断されてしまっている。そんな状況の中、“伝説の配達人”こと主人公のサム・ポーター・ブリッジズは孤立した人々に支援物資の配達などを行う傍らで、超大容量通信である“カイラル通信”を起動させて都市機能を回復。東から西へ横断してアメリカ大陸をつないで再建を目指していくのだ。 再建を邪魔するテロリストや人を捕食して対消滅(ヴォイドアウト)と呼ばれる爆発を引き起こすクリーチャー“BT”、物を劣化・生物を老化させる時雨(ときう・タイムフォール)など、数々の障害を乗り越えながら大陸を横断していく過程がじつに熱い。 荷物運びは梯子やロープを始めとする、さまざまな道具を使って道なき道を進むのだが、便利な道具をたくさん持てば重量が重くなり、移動速度の低下やスタミナ切れを起こしてしまう。重量の問題をクリアーしても、歩荷(ぼっか)のように荷物を背中に高く積み過ぎると今度はバランスを取るのが困難になるなど、自分が道を歩く際のことも考慮しなくてはならない。 とまあ、文字だけで見るとストレスしかなさそうだが、実際に運んでみるとこれが無性に楽しいのだから不思議なもの。やっとの思いで配達したときの達成感もすさまじいが、絶妙なタイミングで掛かるサウンドトラックがすばらしく、思わず感動してしまったなんて人も多いのではないだろうか。 配達を成功させると感謝の印に多種多様な道具がアンロックされる点も魅力的で、配達がどんどん便利になっていく。運動能力を補強する外骨格のアクティブ・スケルトンや大量の荷物を運べるトラック、敵を攻撃する銃やグレネードなど、じつにいろいろ。とくにトラックは配達に革命をもたらしてくれて、大げさではなく本当に感動した人もいたに違いない。 筆者はトラックのせいで配達依存症になってしまったと言っても過言ではないくらいで、トラックを有効利用したいがゆえに配達そっちのけで国道の復旧に夢中になってしまうという、わけのわからない状態になってしまった。 本作には世界中のプレイヤーと間接的につながる“ソーシャル・ストランド・システム”という仕組みがあるのだが、配達時のお助け要素としても役に立つ。カイラル通信を起動したエリアでは、ほかのプレイヤーが使用した道具や建設した建物などが自分のフィールドに表示されるようになり、何と自分で利用できてしまうのだから非常に便利。 川に橋が架けられていたり、バッテリーを充電できる発電機が設置してあったり。プライベートボックスの中にいままさに欲していた道具が入れられていたりと、筆者もプレイ中何度も助けられて“いいね!”ボタンを連打した記憶がある。なかでも設置された場所を高速移動できるようになる“ジップライン”は大助かりで、人が作ったジップラインを利用しつつ、自分でも建ててルートを構築していくのがコスト削減にもなって賢い。 ゆえに少しでもうまく利用してやろうと、ジップラインの設置場所をあれこれ試行錯誤しているうちに、ジップラインの設置自体がおもしろくなってしまってハマるプレイヤーが続出する事態に。とくに歩行が困難な雪山などではみんな夢中になってしまったのではなかろうか。筆者も当然ながらハマった口で、ジップラインの設置にいちばん時間を費やしたかもしれない。 また、ほかのプレイヤーが通った道筋は足跡として残されてルート選定の役に立つし、人の通りが多ければ足場の悪い場所が慣らされて道ができていくなど、多種多様な恩恵が得られるのがユニークだった。 2021年9月24日は、プレイステーション5(PS5)用『DEATH STRANDING DIRECTOR’S CUT』(デス・ストランディング ディレクターズカット)が登場。オリジナル版にさまざまな追加要素を加えた作品になっており、ダイナミック4K解像度のほか、ウルトラワイドやHDRにも対応している。 筆者はオリジナル版の所持者なので1100円[税込]のアップデートでプレイしてみたが、早い段階からアクティブ・スケルトンや武器が使えるようになっていてより遊びやすくなっていた。国道に雪山を越えるルートが追加されたり、フローター1台までならジップラインを利用可能になっていたりと変更点が多数あるので、オリジナル版の経験者も最初からプレイするのをおすすめする。 2022年3月30日には、PC版『デス・ストランディング ディレクターズカット』がSteamとEpic Games Storeにて発売。8月23日にはPC Game Passで『デス・ストランディング』が配信スタート。 さて、多くの人が気になっているのは『DEATH STRANDING 2』(デス・ストランディング2)の発売時期だろう。東京ゲームショウ2024のステージイベントで小島監督自身の口から発表されたのは、「来年(2025年)のある時期に(発売日を)発表されていただきます」だった。少しずつ解禁されていく開発状況を楽しみにしながら、その“時期”を待とう。