サイゼ元社長が目指した「飲食店版のユニクロ」 おいしい野菜を安く安定的に供給できる仕組み
■採れたて野菜をメニューに加える 私が社長になって以降、力を入れたのが「野菜」です。入社当初から農業を担当し、その後も工場の立ち上げチームを率いていたことから、野菜の生産・加工には、改良の余地がたくさんあると思っていました。 農家に行ってまず驚くのは、野菜の味や食感です。スーパーで買う野菜とはまるで違うのです。 だから、そのままの野菜をお客さまに食べてもらおうというのが当面の目標になりました。「売れそうだからつくる」のではなく、「おいしいから食べてみて」というのがサイゼリヤの原点であり、繁盛店に共通する点です。
野菜のおいしさは、鮮度で決まります。収穫後からすぐに味がどんどん変わっていくものが多くあります。また、破棄している部分でも普通に食べられるものが多くあることを知りました。 そこで野菜はできるだけ気温が低いうちに収穫して、すぐに温度を下げます。そして、これまで使用してこなかったものも買い取る。そして、工場につけばできるだけ早く加工する。 おいしさが落ちる前に、これでもかというくらい、ふんだんに使って加工するわけです。
ほかのレストランチェーンを見ればわかりますが、野菜のメニューは実はそれほど多くありません。とくに葉物野菜の量は限られています。 健康志向の高まりで、サラダを充実させたレストランは増えていますが、野菜は高いし、すぐに悪くなる。 だから、サイゼリヤと同じ価格帯で、サイゼリヤと同じ量のレタスを使ったサラダは、見たことがありません。日持ちがするキャベツならわかりますが、レタスではそもそも無理なのです。 トマトも力を入れた野菜のひとつで、品種改良を重ねました。日本で一般に使用されているトマトはカットすると果肉が崩れてしまうことから、店舗でカットしていました。そのためにかかる人件費は相当なものでした。
また、カットに包丁を使うとけがをするリスクが高くなるため、専用のカッターを使用していました。専用カッターを使うことでけがは減ったのですが、捨てる部分も多かったため、今度はカット方法をスライスから八つ切りへと変化させていきました。 カットしても果肉が崩れないトマトができてから、工場でカットすることが可能となりました。大量に処理するために、カットの形状は角切り(コンカッセ)となりました。 このように品種や形状を大きく変える際は、お客さまからクレームが一切出ないことをテストで確認しながら開発を進めていました。