【オートレース】連覇を狙う青山周平「とにかくエンジンが本当にいい」~川口・SGスーパースター王座決定戦
やっぱり、この方が最強です。チャンピオンです。キングです。横綱です。 トライアル4回戦12Rを青山周平が制した。スタート攻防こそ、金子大輔、鈴木圭一郎に先を譲ったが、レース隊列が整う前に仕掛けた。スルリ、スパッと前を仕留め先頭へ。そのまま周回をていねいに消費して誰よりも先にゴール線を通過した。 トライアル3回戦では先行車をなかなか攻略できず4着に敗れ、自身が積み上げてきた連勝記録も「16」でストップした。しかし、対策の処方、引き出しは、余るほどあった。「エンジンが良すぎて手を入れにくかったんですが、ここで下回りをやることに決めました。そのお陰でエンジンは確実に上向いてくれましたね!手伝ってくれた周りのみなさんに感謝です!」 この大会中もプロの姿勢、強い責任感、リーダーとしての責務と全力で対峙し続けている。実は2021年にデビューして以来、ずっとマンツーマンで指導を行っている新井日和と青山のロッカーは、最も離れたところにある。その妹分のロッカー付近で何度チャンピオンの姿を見たことか。年末決戦にすべての力を注がねばならぬ局面に立っても、青山は自身の調整だけでなく遠く離れた新井のところまで出向いて、レースが終わるたびに綿密に助言を伝え続けていた。 「もう、本当は自分のことに集中したいんですけれどね」と口では言うが、やっぱり放っておけない。時に整備の手を止めて、新井の面倒に時を割いた。 同じ31期生たちに頼られると、やっぱり手を差し伸べる。古木賢が自身のバイクを青山に委ねて調整を施してもらうと「本当に申し訳ない」と頭を下げていたが、気を使わせない青山は「いやいや、手伝っているようで、こっそり実験しているんだよ。こうやったらこう動くのかと実験しているだけだよ」と笑顔で工具を握っていた。多くのすがってくる周囲の者たちをヘルプしながら、コースではしかと結果を残してくる。それが令和の青山である。 さらに、涙ぐましいシーンを目撃した。毎日、毎日、体も神経もヘトヘトに使い果たしているが、お昼時間に小さな器を手にした青山がいた。聞いてみると「あっ、お昼ご飯です。これですか?雑穀米です。体にいいので。でも、結構おいしいです。まあ、白米ほどではもちろんありませんけれどね」 どこまでも、どの方面でもとことんストイックを貫いている。そこまでしなければ、長くトップに君臨できないのならば、自分だったらとっくに妥協して白メシを爆食いしちゃうところです。「だから、家族には迷惑を掛けちゃっていますよね。食事メニューに僕がうるさいんで。でも、その分、仕事で家を空けている時は子どもたちもサイゼリヤとかに行っているみたいです(苦笑)」 さあ、用意は整い切った。エンジンは頼もしく噴きまくっている。自身のメンタル状態も申し分ない。あとは大得意の1枠からスタートを切るのみ。逃げるのみ。その先に、昨年大会に続くVは待っている。通算6度目のSS制覇が待っている。 Vの可能性を聞くと「とにかく、エンジンが本当にいいので!」。はっきりと明言しなくとも、これは事実上の優勝宣言かと。 ああ、オートレーサーじゃなくてよかった。こんな男がいたら絶対にチャンピオンにはなれません。白米食べて、ハルクを応援しよっと。(淡路 哲雄)
報知新聞社