年初来高値を更新した「東京靴流通センター」の【チヨダ】、好調の要因は”簡単に履ける”靴?
会社四季報を読んでいて、「ん?」と何かが引っ掛かることはよくあります。最新号の秋号でもさっそく「ん?」となりました。それは、「シュープラザ」や「東京靴流通センター」などを展開する靴量販手大手のチヨダ(8185)の記事欄です。 【画像】チヨダ決算
業績急回復のチヨダ
「簡単に履ける『スパットシューズ』は100万足計画をゆうに超えるペース」とあり、『スパットシューズ』とやらが、やたら売れていることが読み取れます。チヨダは、2019年2月期から2022年2月期まで4期連続赤字決算で、かなり苦戦を強いられていました。2020年以前も減益傾向だったため、コロナだけが不調の理由ではなく、根本的な問題があったのでしょう。 それが、「スパットシューズ」が救世主となり、業績が急回復しています。前期2023年2月期は、①営業損失△2234(百万円)でしたが、2024年2月期は1071(百万円)と黒字転換。 さらに2025年2月期の予想では、③1250(百万円)と④前年比+16.7%と急改善です。 いったい「スパットシューズ」とは、どんなものなのでしょう? これはチヨダのプライベートブランド「CEDAR CREST(セダークレスト)」で展開しているもので、靴を履く際にかがむことなく、すぱっと履ける仕様の靴です。前期は、50万足の販売を計画していましたが、75万足と大幅超過となりました。今期は100万足を目指していますが、四季報によれば”ゆうに超える”ペースで売れているようです。 たしかに靴をはくとき、わざわざかがんだり、靴べらを使ったりというのは、手があいていないとできません。両手に荷物を持っていたり、赤ちゃんを抱っこしてたら、かなり不便です。スパットシューズには、スニーカー、ビジネスシューズ、ウォーキングシューズ、サンダル、ジュニア用と各種取り揃えており、幅広い層に愛されているようです。
ライバルシューズの状況は?
じつはこの”手を使わずに簡単に履ける”タイプの靴は、ほか企業でも出しており、密かに火花を散らしています。アメリカのシューズブランド「Skechers(スケッチャーズ)」も同様のシューズ「スリップインズ」を2022年から展開しており、バナナマンの日村さん、LiLiCoさんが出演するCMでおなじみです。こちらは価格帯がだいたい1万円程度でややお高め。全国のイオンモールや、ABCマートなどで売られています。ただ、日本では上場していませんので、投資対象としては除外します。 上場企業で、製造販売している企業では、ワークマン(7564)の「ステップインスリッポン」。こちらは2500円とリーズナルブルですが、デザインは1型しかなく、当社の主力製品とはいえそうにありません。売上利益に対する寄与度は低そうです。 ちなみにワークマンは、コロナ以降の原材料価格や燃料費に高騰においても、頑なに値上げをせず頑張っておりましたが、ここ最近は、積極的に値上げをして利益率の改善を図っています。世の中的に値上げが消費者にも受け入れやすくなってきたことが背景にあるようです。2023年3月期、2024年3月期は前年比で減益でしたが、今期25年3月期は+2.1%と僅かではありますが増益予想です。 もう1社、意外な企業がこのタイプの靴を発売しています。驚安の殿堂ドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)です。その名も「Spash(スパッシュ)」。これは、「誰かの悩みを解決する靴」をコンセプトに開発した商品で、「膝や腰がつらい」「子どもから目が離せない」「荷物で手がふさがっている」といった状況でも、手を使わずに履けるように設計されているということから、まさにチヨダの「スパットシューズ」のライバルです。ただし、「スパッシュ」は、男性向けに特化しておりサイズ展開は25~28センチ、スニーカータイプとスリッポンタイプの2型に絞られています。 2023年11月に発売した当初は、23~28センチで男女どちらでも履けるサイズ展開にしていましたが、2024年9月1日のリニューアルで25センチからの展開に。思ったほど女性サイズが売れなかったため、アイテム数を絞り込み、コスト削減を図ったようです。 スパッシュの売上は、当初計画比160%で推移するほどの好調っぷりですが、時価総額2兆円を超える企業においては、売上利益への寄与は軽微です。