「サバイバル漫画」が描く“災害で崩壊した世界” 『ドラゴンヘッド』『サバイバル』『望郷太郎』が担う役割
■原初的経済社会の中でのサバイバルこそが主題 文明が一度リセットされた世界で、生き残った人々が再び社会を作り、政治や経済や戦争が生まれる。貨幣経済が誕生し税金の徴収や選挙も行われるようになる。それは、太郎にとって得意分野だ。この世界で太郎は、いかにして生き延びるのか。大自然の中でのサバイバルではなく、原初的経済社会の中でのサバイバルこそが本作の主題なのだった。 政治や経済のシステムがいかに生まれ発達していくかをリアルタイムで見ているような迫真の描写に圧倒される。ゴルフクラブやタイヤなど、かつての文明の遺物を別の形で利用しているのも、なるほどと思う。ポトラッチ(北米先住民に見られる儀式的贈答競争)やイニシエーションといった文化人類学的テーマも盛り込まれた大人のための教養エンタメ大作。物語はまだ途中だが、最後にたどり着くであろう日本がどうなっているかも見逃せない。
南 信長 :マンガ解説者