新たな働き方「スポットワーク」のインパクト シニアや育児世代、ビジネスパーソンも #くらしと経済
「単発」のバイトが基本だが、企業が長期的に雇いたいと思えばアルバイトや正社員として無料で社員に登用することが可能だ。また「働き手の働きたい時間」と事業者の「働いてほしい時間」をマッチングさせるプラットフォームである以上、職能のミスマッチは起きてしまうが、相互評価制度を導入することで極力ミスマッチを防いでいる。例えば無断欠勤が相次ぐ働き手は評価が下がり、サービスが利用できなくなるなどのペナルティーが課せられる。 一方で、求人内容と実際の業務が異なっていた場合など、事業者側に落ち度があれば評価が下がってしまう。そのスコアは応募者に公表されており、スコアが低い企業には申し込みが集まらなくなる。違法性のある仕事はタイミー側の審査で申請段階で除外される仕組みだ。 一見、いいことずくめのようにも思えるスポットワークだが、今後社会にどのようなインパクトを及ぼすのだろうか。また、リスクはないのだろうか。専門家に聞いた。
「賃金の底上げ効果も期待できる」専門家が指摘するメリット・デメリット
「スポットワークは労働市場に大きな影響を与える」と指摘するのは日本大学経済学部の安藤至大教授だ。「注目すべきは、ほぼリアルタイムに同じ仕事の市場価値が可視化されたという点です」と説明する。 例えば12月のクリスマスから年末にかけての書き入れ時を想定してほしい。ある飲食店で時給1200円で働いているアルバイトスタッフが、スポットワークのアプリ上で、自分と似たような仕事が時給2500円で募集されているのを見たとする。 「当たり前ですが、1年を通して、繁忙期には賃金は上がるし、閑散期に賃金は安くなります。それがもっと細かい単位でわかるようになったんです。この瞬間に、現在の時給が明確にわかるわけです。これまでは、自分たちの現在の労働の価値がいくらなのかわかりませんでした」 先ほどのクリスマスの事例なら、アルバイトのシフトを調整して、時給2500円のスポットワークで働いたほうが働き手にとっては得になる。 「雇用者としては、繁忙期にアルバイトのスタッフに働いてもらわないと困ります。ならば1200円の時給を上げるしかありません。長い目で見ると、スポットワークが、パートやアルバイトを雇用する事業者への賃上げ圧力にもなっているんです」と説明する。 一方でリスクも指摘する。 「都合の良い時間でできる仕事ということは、裏を返せば、誰でもできる単純作業ということです。ですからスポットワークをいくらこなしてもキャリアが積み上がりにくい点に注意は必要です」 実際にスポットワークの仕事の求人を見てみると、清掃業務や倉庫の棚卸しなどの仕事が多く目につく。コンビニのレジ打ち業務のような複雑な仕事は基本的に経験者が優先的に採用される。 「ほかにも社会保険の問題はあるでしょう。大まかに言えば、同じ会社で年間106万円以上稼いだ場合はその会社で社会保険の加入対象になりますが、基本的にはスポットワークの大半が社会保険の対象外です。配偶者の扶養に入っていない場合や年収が130万円を超えると自分で国民年金や健康保険を払わないといけません」 安藤教授の指摘する懸念点に対して、タイミーはどう対処しているのか。小川氏にぶつけてみた。