超高額なF1ドライバーへの罰金。最高設定額は1億円超……しかし実際には1000万円弱が相場? 近年の罰金事例を振り返る
モータースポーツでは、レギュレーションに違反すると何らかの罰則が科されることになる。その中には罰金を科されるケースもあり、最高峰のF1ともなれば、その罰金の額はとんでもないものとなる。 【ギャラリー】F1史上最も醜い、2014年のF1マシン全車 多くの場合、罰則を科されるのはチームだ。レギュレーションに違反した場合には、グリッド降格から罰金まで、様々な罰則が用意されている。しかし、ドライバーに直に科される罰金も存在する。 現在のレギュレーションでは、F1ドライバーに科される可能性がある罰金の最高額は100万ユーロ。円安傾向にある昨今であるがため、日本円で1億6000万円以上にもなってしまう。ただ幸いなことと言うべきかどうかは分からないが、この額の罰金を科されたドライバーはいない。 本稿では、これまでドライバーに科されてきた高額の罰金を含むペナルティの事例をいくつか紹介していく。それによって、今後の裁定に対する客観的な事例とすることもできるだろう。 ■接触の責任 F1では、解釈にグレーゾーンがなくてはならない。逆にグレーゾーンがなければ、F1ではないとも言える。スチュワードにとっては、それを正しく裁定するのは、非常に難しい仕事であろう。 そんな中で、接触事故の責任があると認定されたドライバーに対しては、ペナルティが科されることが多い。そしてそのペナルティは、競技的なペナルティだけではなく、罰金という罰則も科されることもある。 その典型例は、2012年のベルギーGPで起きた多重クラッシュだ。この事故は、当時ロータスのロマン・グロージャンが、スタート直後のターン1でブレーキングを激しくミスし、チャンピオン候補の2台を含む5台にダメージを及ぼした。その中の1台は、F1で初めてフロントロウスタートとなった小林可夢偉(当時ザウバー)であり、日本のファンの夢はまさに一瞬で崩れ去った。よく覚えておいでの方も多いだろう。 この事故はグロージャンに全面的な責任があるとして、1レースの出場停止と5万ユーロ(約800万円)の罰金が科された。 ただその前の数年は、コース上での接触に対して罰金が科されることは非常に稀だった。そんな中のひとつが、1994年ブラジルGPで起きた事例である。 このレースでは、エディ・アーバイン(ジョーダン)がヨス・フェルスタッペン(ベネトン)とポジションを争っていた。34周目、アーバインは周回遅れのエリック・ベルナール(リジェ)を抜こうとしたが、その瞬間にはフェルスタッペンが横に並びかけていたため、幅寄せするような格好となった。 フェルスタッペンはアーバインとの接触を避けるためにコース外に押し出されるとコントロールを失い、アーバインとベルナール、そしてひとつ前を走っていたマーティン・ブランドル(マクラーレン)を巻き込むような形でクラッシュが起きてしまった。 これについてはアーバインに非があるとされ、1万ユーロ(約160万円)の罰金と1戦出場停止の処分が下った。所属チームのジョーダンはこれに抗議したが、判定は覆らないどころか逆に重く、出場停止処分が3戦に拡大してしまった。 また2012年のイギリスGPでは、当時ウイリアムズのパストール・マルドナドが、ザウバーのセルジオ・ペレスに接触。スチュワードはマルドナドに対して、やはり1万ドル(約150万円)の罰金を科した。この裁定については、軽すぎるのではないか……という声もあった。 ただこのレースでは、ペレスのチームメイトであった小林にも、罰金が科された。小林はピットストップの際に、停止位置を見誤って3人のクルーを跳ねてしまった。このうち2名は治療が必要となった。小林にはこの事故の責任を問われ、2万5000ユーロ(約400万円)の罰金が科された。 つまり他のチームに損害を与える行為よりも、自チーム内に損害を与えた行為の方が、重い罰金を科されることになったというのは皮肉な話だ。 ■グレーゾーンがない罰金 F1ドライバーが確実に罰金対象となる事例がある。それは、許可なくコースを徒歩で渡るという事例だ。一貫性がないと言われることの多い近年のF1だか、ことコース横断に関する裁定には、一貫性があると言うことができよう。 2023年のカタールGPでは、スタート直後にメルセデスのルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルが同士討ち。この事故によりハミルトンがリタイアとなり、セーフティカーが出動した。このセーフティカーラン中、ハミルトンは許可なくコースを横断したため、5万ユーロ(約800万円)の罰金が科された。このうち半額は執行猶予がつけられたが、それでも日本円にして400万円もの罰金は即座に払わなければならなかった。 2024年マイアミGPのF1スプリントでも、ランド・ノリス(マクラーレン)がコースを横断し、やはり5万ユーロ(約800万円)の罰金、半分は執行猶予付きという処分を受けた。 2024年シンガポールGPの予選Q3では、フェラーリのカルロス・サインツJr.がやはりクラッシュした直後にコースを横断。この時は赤旗中断中だったため、罰金額は2万5000ユーロ(約400万円)に減額。うち半額の1万2500ユーロ(約200万円)は執行猶予つきである。