超高額なF1ドライバーへの罰金。最高設定額は1億円超……しかし実際には1000万円弱が相場? 近年の罰金事例を振り返る
■暴言に対する罰金
最近特に話題となっているのが、暴言に対する罰金だ。 フェルスタッペンは今年、FIAの会見で放送禁止用語を使ったとして、罰金よりも重い社会奉仕活動への従事という罰則を科された。 RBの角田裕毅もオーストリアGPの予選で、ピットレーンで前のクルマに詰まってしまった際、暴言を吐いた。この件については4万ユーロ(約600万円)の罰金対象となり、その半額は執行猶予付きである。 フェラーリのシャルル・ルクレールも、2024年のメキシコシティGP決勝レース後の記者会見で、不適切な言葉を使ったとして罰金1万ユーロの裁定が下った。これも、半額が執行猶予となっている。 なおFIAからではないものの、失言により超高額の罰金刑を言い渡されたドライバーがいる。それは、元F1チャンピオンのネルソン・ピケである。 ピケは2021年にポッドキャスト番組で、同年のイギリスGPで接触したルイス・ハミルトンとフェルスタッペンの件について尋ねられた際、ハミルトンについて人種差別的な発言を行なった。これには非難の声が上がり、ブラジルの人権団体が法廷に持ち込んだ。その結果、ブラジルの民事裁判所はピケに対し、500万レアル(約1億2500万円)の罰金を命じた。 なおピケの娘であるケリー・ピケは、まもなくフェルスタッペンとの子供を出産予定である。 ■奔放なベッテル 4度のF1チャンピオン経験者であるセバスチャン・ベッテルは、独特な形で罰金を言い渡された人物でもある。 2018年のブラジルGP予選でベッテルは、ランダムに義務付けられる重量計測に呼ばれた際、早く終わらせるようFIAの担当にプレッシャーをかけた。当時は雨が強まりそうなタイミングであったため、ベッテルはいち早く軽量を終わらせ、コースに戻りたかったのだ。 そのベッテルは計量が完了する前にマシンを発進させてしまい、その結果計量台を破壊。この行為で2万5000ユーロ(約400万円)の罰金を言い渡された。 2022年のオーストリアGPでは、ベッテルは怒りのあまりドライバーズミーティングを途中退出してしまった。ただ落ち着いたベッテルは謝罪し、オフィシャルと建設的な話し合いを行なった。FIAはこの件に関して2万5000ユーロ(約400万円)の罰金処分を科したが、話し合いを行なったことが評価され、全額が執行猶予付きとなった。 この年のオーストラリアGPのFP1では、コースを無断でスクーターで走ったとして、5000ユーロ(約80万円)の罰金を言い渡された。このセッション終盤にベッテルはマシントラブルによりコース脇にストップ。そしてセッション終了後、マーシャルのスクーターを”奪って”コースに進入し、ファンサービスしながらピットに戻った。ただこの時はまだコースに入る許可が降りていない段階であり、罰則の対象となったのだ。 ■2021年の激闘の裏で 2021年シーズンのF1は、フェルスタッペンとハミルトンによる激しいタイトル争いが繰り広げられた。 そんな中フェルスタッペンは、ブラジルGP予選の後に、ライバルであるメルセデスのリヤウイングを注意深く観察し、そして触ってしまった。しかしこれはスポーティングレギュレーション違反であり、即座に5万ユーロ(約800万円)の罰金が言い渡された。 またその翌日、ハミルトンはレースに勝利し、喜びのあまりウイニングラップ中にシートベルトを外してしまった。この行為についても「ジュニアカテゴリーのドライバーたちに対して悪い前例」になるとされ、即座に5000ユーロ(約80万円)の罰金。さらに2万ユーロ(約320万円)が執行猶予となった。
Michael Banovsky 田中 健一