スパルタ式に子どもを育てると「早く成長」したようにみえるが、じつはそこに潜んでいる「落とし穴」
日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。人生には、さまざまな困難が待ち受けています。 【写真】じつはこんなに高い…「うつ」になる「65歳以上の高齢者」の「衝撃の割合」 『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)では、各ライフステージに潜む悩みを年代ごとに解説しています。ふつうは時系列に沿って、生まれたときからスタートしますが、本書では逆に高齢者の側からたどっています。 本記事では、せっかくの人生を気分よく過ごすためにはどうすればよいのか、『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)の内容を抜粋、編集して紹介します。
見せかけの前進
親がスパルタ式に厳しく育てると、ほかの子どもより早く成長するように見えますが、それはほんとうの成長ではなく、親が怖いから行っているだけになります。「見せかけの前進」といわれるもので、その先の成長を考えると、自立性が育たず逆効果になります。 逆にほめすぎると、子どもはほめてもらいたいためによい子のふりをしたり、親がほめてくれそうなことだけをするようになり、打算的になってしまいます。家庭内でほめられ続けると、自分は優れていると過信し、幼稚園や学校でそれほどでもないと知ったとき、無用な失望を味わうことにもなります。 厳しく育てるのもほめるのも、子育てには大事なことなので、子どもの反応を見ながら、過度に偏らないよう行う必要があります。 また、親の都合で突き放したり、猫かわいがりしたりすると、子どもは親の顔色を見るようになり、やはり自立性が育ちません。親が気分屋であったり、心に余裕がなかったりすると、つい子どもを邪険にしたり、逆に過剰に愛情を示したりして、子どもを戸惑わせます。 子どもが意欲的かつ創造的な成長をするためには、精神面での安定が必要です。「基本的信頼」と「社会的参照」が必要なのですが、親が自分の都合を優先していると、ともに不安定なものになってしまいます。 さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6~7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。
久坂部 羊(医師・作家)