里中満智子「なぜマンガ家になりたいと思ったのか。約60年描き続ける原点は、小学6年生で起きた考え方の変化」
◆悪書追放運動 物理学者は、細かいことは分からなかったけれど、ファンタジーやSFを読んでいて、生命や地球の成り立ちや時間の観念に興味を引かれ、憧れていたのです。 ただ真剣に考えてみると、自分が一番夢中になっていたのは、宇宙旅行や生命の成り立ちを見せてくれたマンガだったのです。 その頃は、悪書追放運動のまっ最中。 このままではマンガは大人たちの激しい攻撃に滅ぼされてしまう。でも絶対に生き残らせたい。そう考えていた頃、ふと気づきました。 その頃から映画を見はじめたのですが、素敵な作品がたくさんあるのです。映画が生まれたのが1890年代。まだ70年くらいしか経っていませんでした。 映画が生まれた当初は、列車が近づいてくるだけとか、タバコ工場の昼休みに女の人たちがゾロゾロと工場から出てくるとか、たったそれだけの映像です。それを見て大人たちはびっくりしていました。 それからたった70年で、映画は瞬間芸から哲学まで語れるようになりました。だから絶対マンガもそうなるだろうと思ったのです。 ※本稿は、『漫画を描くー凛としたヒロインは美しい』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
里中満智子
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