600馬力が2000馬力に変身!? 本気になれば3倍4倍当たり前ってマジか! クルマのエンジンチューニングの世界がヤバすぎた
1)日産GT-R搭載の「VR38DETT」エンジン
チューニングというと多くの人が思い浮かべるであろう、日産GT-Rに搭載されている「VR38DETT」のケースを見ていきましょう。 「VR38DETT」は3.8リッターのV型6気筒をツインターボで過給する方式のエンジンです。素で570馬力、NISMOは600馬力を発揮し、現在の日産のラインアップで最高出力のユニットとなっています。 出力の絞り出し具合のバロメーターである「リッター換算馬力(1リッターあたりの出力)」は素のほうで150馬力/リッターです。この数字自体は世界的に見てトップレベルではあるものの、ランキング上位とはいえません。 しかし、このVR38DETTのすごいところは、このレベルのパワーを絞り出しながら、サーキットを全開走行したあとでも普通にクーラーを利かせて自走で帰れるという安定性にあります。つまり、チューニングの余地はそれなりにあるといっていいでしょう。 具体的には…… <ライト> VR38DETTのライト(チューン)レベルで見込めるパワーは600馬力オーバーくらいです。これ以上も可能ですが、発熱やパーツの強度などに影響が大きく耐久性を激しく損ないます。 チューニングの内容は吸排気系の交換とECUの書き換えによるブーストアップで、費用は50万~100万円くらいでしょうか。 <ガチ> ガチでチューニングする場合の出力は1000馬力以上になります。このレベルになるとチューニングの内容は多岐にわたりますが、主要なところを挙げていくと、ビッグタービン、高強度のピストン&コンロッド&クランク、ハイカムへの交換、シリンダーヘッドの加工、動弁系パーツのモディファイ、吸排気系のサイズアップ、大容量インタークーラー&ラジエター、社外コンピュータと専用のプログラムなどなど。 費用は一気にハネ上がり、レベルに応じて300万~1000万円以上となります。 <アルティメイト> ずばり、VR38DETTのチューニングで現在の最高レベルは2000馬力オーバーです。これは純正のシリンダーブロックを使ってストロークアップで排気量を上げたケースのMAXです。1本だけの記録狙いでNOSを注入して「ブロー上等!」という覚悟なら2300馬力は出せるかもしれません。その場合のリッター換算馬力は600馬力/リッター以上に至ります。異次元の域ですね。 チューニングのメニューは<ガチ>と大きく違いはありませんが、異なるのは耐久性の犠牲度合いの大きさです。このレベルになると、いくら高価な素材や加工を施して冷却に尽力しても、連続で全開できる時間は数分が限界でしょう。限界というのは、クールダウンすればあと何回かはアタックできるということです。 いわゆる次回のオーバーホールまでの時間でいうと数時間分(絞り出し具合によります)という感じでしょうか。 まさに命を削って出力を得ているというレベルです。費用はというと、800万~1500万円以上といった感じでしょう。 ただ、これはエンジンだけの価格で、このレベルになると駆動系とタイヤはすべて専用のゴツいものへの交換が必須で、ボディはその駆動力を受け止めるように強化し、安全確保のためのロールケージも必須です。タイム狙い目的なら軽量化もするでしょうから、トータルは数千万円になると思われます。 ちなみに「VR38DETTベースで4000馬力出せるよ」と謳っているチューニングキットもありますが、排気量が5リッターになっているようなので、もはや別物のエンジンといっていい内容までモディファイされていると見ていいでしょう。