ロボットデリバリーが変える物流の未来 先行する米中、速度アップと安全性の両立カギ
同協会の会員である楽天グループは昨年11月から東京都内で配送ロボットの運用を始め、パナソニックホールディングスは神奈川県内で同月、吉野家や出前館との共同実証実験を実施した。
真にドライバー不足を補うには、配送効率の向上などが課題だ。小型ロボットは狭い歩道でも走れる半面、速度が遅く、積載量は少ない。米国や中国では中速・中型の導入が進み、米カリフォルニア州では時速40キロで車道を走行している。
京セラコミュニケーションシステムは最高時速15キロ、積載量90キロの中型ロボットの実証実験を進めている。同社は「法令やインフラが未整備で、地域の理解も必要」としており、時間をかけて実用化を模索する方針だ。
■万博でスーツケース型も
4月に開幕する2025年大阪・関西万博では、大阪大大学院の石黒浩教授(ロボット工学)が出展するアンドロイド(人間型ロボット)のほか、輸送や通訳、受け付け、警備、歩行支援など多様な場面で、さまざまなロボットが登場する。
電子部品大手アルプスアルパインなどの企業連合と日本科学未来館(東京)は、自律型誘導ロボット「AIスーツケース」を会場で運用する。目の不自由な来場者が声で指示すれば、目的地まで誘導してくれる。
竹中工務店などの企業連合は、水上の自動運転船「海床(うみどこ)ロボット」を披露する。3メートル四方の床(ゆか)の形をし、人を乗せて運ぶことができる。将来的には都市部の河川などで人やモノの輸送に活用することを想定している。
大阪メトロは会場でのバス運行を計画し、特定条件下で運転手が不要になる「レベル4」と呼ばれる高度な自動運転を行う。
日本総合研究所の藤山光雄・関西経済研究センター所長は「万博は未来社会の実験場であり、失敗を恐れず新技術を試すことができる」と指摘する。(田村慶子、黒川信雄)
■高齢者見守りも兼ね、公共性高めて
東京科学大特命教授・屋井鉄雄氏(交通計画)の話
自動配送ロボットの普及を考える上で最も懸念されるのは「道路空間」だ。運用中の小型配送ロボットは最高時速6キロで、歩道を走るのは問題ない。ただ、実験では許容範囲だとしても、ビジネスとして成り立たせるのは難しいといわざるを得ない。