「トランプ政権復活」で、どうなるテック業界 日本含めた影響を予測する
利益は「最大の功労者・マスク氏」にも
第二次トランプ政権発足に対し、最大級の功労者はイーロン・マスク氏だろう。そして彼は当然、その分の利益を得ることになる。 AIに対する「自由な開発」路線は、マスク氏が運営する「xAI」にも等しく有利な状況をもたらす。 SpaceXでの宇宙事業は、どうしても政府との関係が重要になる分野だ。トランプ氏は11月6日の勝利演説の中でも、「イーロン・マスクのStarlinkの優秀さ」について時間を割いて言及していた。こうした関係の近さは、SpaceXにとって間違いなくプラスである。 第一次トランプ政権は宇宙開発・軍事目的開発に積極投資する体制だった。第二次政権下でも同じ姿勢が維持されるなら、SpaceXにとっても有利な条件と言えそうだ。マスク氏は火星に行くことを目標に掲げており、そのためには政府との協調が必須でもある。 また、基本的には規制緩和方針の政府となるので、自動運転タクシーやロボットのビジネス化にもプラスなのは間違いない。 トランプ氏は法人税や富裕層向けの減税も公約に掲げている。大規模な減税は、法人や富裕層にもプラスだ。当然、マスク氏はその恩恵も受ける。
環境対策は後退するもEVはおとがめなし?
トランプ氏は地球温暖化を信じておらず、政府や企業によるCO2排出量削減には消極的だ。そうした部分での政府支出のカットを減税を補うものとして考えている。 各企業でそれぞれ対策を進めていくことになるだろうが、国からのエンフォースメントが弱くなれば、当然その分、積極的な対策が減る可能性もある。 企業側もここまで続けてきた理念や活動を捨てない、と信じたいところだが、対策の後退は否めない。筆者としてはこのことが長期的に環境に与える影響を憂慮する。 ただ、この話で違和感を持つ人もいるかもしれない。 EVは(少なくとも米国という環境においては)CO2排出量を減らし、持続性を高める技術といえる。過去トランプ氏はEVに強く反発し、「EVに対する優遇措置はすぐに止める」と発言していたこともあった。 ご存じのように、マスク氏のテスラは最大のEVメーカーであり、バッテリーによる蓄電技術で電力の有効活用も目指している。トランプ氏が否定したものそのものだ。 ただこの点について、マスク氏がトランプ氏支持に回ってからトーンが変わってきており、トランプ氏もEVを許容する発言を始めている。 おそらくだがトランプ氏は、テスラを「競争力のある米国企業」としてみて、EVか否かはあまり重要ではない……と考えるようになっているのではないか。 だとすれば、テスラをはじめとした企業がEVを作ること自体には反対しないものの、その目的は「新しいテクノロジーと利便性」であってサステナビリティではない、という論調になっていくのかもしれない。
ITmedia NEWS