「トランプ政権復活」で、どうなるテック業界 日本含めた影響を予測する
生成AIは「規制」から「自由」へ
生成AIに関する方針も大きく変わる。 特にAI関連については、中国の台頭を防ぐためにさまざまな施策が行われることになるだろう。 バイデン政権下では生成AIの法規制について、国際協調的かつ、一定の法的な枠組みを用意して臨む方針だった。それを象徴しているのが、2023年10月末に署名した「安全で信頼できるAIの開発と使用に関する大統領令」だ。 だが、トランプ氏はこの大統領令について「過度な規制である」と批判しており、撤回を公約として掲げた。撤回、もしくは大幅な修正が入ることは間違いないとみられる。 生成AI規制についてはEUが厳しい立場で臨んでおり、一定のハードロー(強制力を持つ法的な枠組み)による規制が各国で進むという流れだったが、トランプ氏の考えは異なる。より軽微な規制にとどめ、自由な開発を促す方向になるだろう。 規制の方向が弱まることはAIプラットフォーマーには基本的に有利な条件であり、それは米国の利益にもつながる話ともいえる。 ただ完全に有利な話であるように見えて、意外とそうでもない。 生成AI関連のサービスを国際的なビジネスにするには、各国の規制や制度が大きく異なっていると問題が起きやすい。各国に合わせた対応を求められると、事業者側としてもやりづらくなる部分はある。 現時点でも、AI関連のサービスについて「EUのみ展開しない」というパターンが散見されるが、そうした乖離はさらに続く可能性が高い。 もちろんこれは、欧米協調路線を採って一定のハードローで進めようとしている日本はどうあるべきか、という話につながってくる。
トランプ・モンロー主義がビッグテックの在り方にも影響
トランプ氏がこうした政策を採る理由は、彼が本質的に「モンロー主義」を継承するような立場にあるためだ。 そもそもは1823年に第5代米国大統領のジェームズ・モンローが進めた孤立政策。200年経って国情も世界情勢も変わっているので、孤立政策という点は同じでも、やることも立場も変わってくるのは必然だ。 筆者が読んだ予測でもっとも腑に落ちたのは「大国という意識に支えられていた米国側からの積極的関与が減る。どう関与するかを選択するのは、米国の威信からではなく、トランプ氏の考えに基づく」というものだ。 だとするならば、AI関連の協調的な規制にしろ関税措置にしろ、「米国単独での利益にどうつながるのか」という観点がより重視されることになるだろう。 冒頭で述べたように、トランプ氏の政策の軸はインフレ対策であり経済施策だ。 現在、有力なテクノロジー・プラットフォーマーのほとんどは米国企業である。その利益が最大化される限りにおいて、現在の流れは維持されるものと考えられる。 政権が変わることは、連邦取引委員会(FTC)の人事や方針にも影響がある。 バイデン政権下では反トラスト法によるビッグテック規制が進められてきたが、その矛先やありようが変わる可能性も高い。そうなると、分割や強い規制ではなく現状容認路線になり、ビッグテックによるM&Aがしやすくなるだろう。ただここは、方針がまだ見えづらいところだ。