一粒の麦から、この一皿へ。「acca」そして「sowai」、料理人・林冬青の現在形
左から、伊賀正直、大倉秀千代、林夫妻。伊賀も東京から移住し、オーガニック栽培で有名な「ワッカファーム」で働いたのちに独立。安心安全な米作りを行う。
小麦栽培を始められたのは、大倉の存在あってこそ、と林は言う。大倉は1995年頃から完全無農薬で小麦を育て、石臼で製粉し、うどんを打つことに挑んできた。「うどんは日本の伝統食なのに輸入小麦を使うことを疑問に思ったんです。当時、国産小麦はなかなか手に入らず、全国を探し回りました。なんと灯台下暗し、隣町で地品種を見つけ、種から育て始めました」と大倉。初めは輸入小麦も用いたが、近隣農家への委託分を含め、現在はすべて地元産小麦でまかなえるようになった。出会った多彩な生産者を集めて開催する朝市も好評だ。林は「ここまでされるのに驚きましたし、それがセルフのうどん店というのも格好いい。地方再生にも貢献されています。大倉さんは、この地にさまざまな恵みをもたらす七福神みたいな人」と尊敬の念を隠さない。
長船町にある、備前福岡「一文字うどん」の製粉所にて。電動石臼製粉機で小麦を挽いてできたふすま(表皮)は、ふるいにかける。ふるいのメッシュの度合いと回数は林のリクエストによる。写真右はふるいに1回、左は2回かけたもの。
「一文字うどん」の2代目にして“国産小麦うどん”のパイオニア、大倉秀千代。
大倉は、小麦と米を二毛作で栽培。米は合鴨農法にて。写真は青首鴨の赤ちゃん。「一文字うどん」の近くの鴨場で孵化し、自家配合の安全な飼料で元気に育つ。 BY MIKA KITAMURA