2時間メイクしないとカウンセリングに行けない…「複雑性PTSD」の筆者が「5人のインナーチャイルド」と向き合って「変わった日常」
できることなら消えてほしい
気持ちを伝え、ひたすら泣くインナーチャイルドワークは自分の感情がよく分からず、人前で泣くことが苦手な私にとって辛い治療だった。涙でメイクが取れるのも嫌だった。 当時、私は整形を考えるほど、自分の顔を醜いと思っていたため、どうせ落ちてしまうと分かっているのに、2時間ばっちりメイクしないとカウンセリングへ行けなかった。そのことも、自分をさらに苦しめた。 インナーチャイルドと一緒に生きていこう。カウンセラーからそういう言われても、無理だと思った。「出てきたら困る」と思っているこの子たちを受け入れられるはずなどないと思ったし、できることなら消えてほしかった。 虐待を受けると脳の機能に影響が現れたり、重大な損傷が引き起こされたりすることが近年の研究では解明されている、だから、私は治療を受けながらも「普通の暮らし」など自分には無理だと思っていた。 カウンセラーは「虐待による脳の傷は、寛解はできる。消えはしなくても、かさぶたのようにはなる」とか「峠を越えたら楽になる」と言ってくれたが、当時の私には信じられなかった。
少しづつ変わった日常
だが、カウンセリングに通い続けていると、私の日常に変化が現れ始めた。最初に変わったのは、喉が渇いた時に自販機で飲み物を買えるようになったことだ。そんな小さな労わりさえも、私は自分にできていなかった。「このくらい我慢しろ。お金がもったいない」と、いつも自分を律していたからだ。 驚く変化は続々と起きる。どこかへ買い物に行った時、「いつもお世話になっているから」と、パートナーや両親へのちょっとしたプレゼントを買うことがなくなった。頭にその思考が浮かんでも、「今日は自分のための買い物だしな」と自身を甘やかすことを優先できるようになっていった。 そして、半年ほど経った頃には、コントロールできない怒りや自分では処理しきれない空虚感に苦しむことがなくなった。これはカウンセラーと共に、怒りの感情を持つ“憂”や真っ暗な部屋の中で苦しむ“空”の本音を理解し、「あなたは悪くなかった」という言葉を自分に贈れたからだ。 消えてほしいと願っていた子は、生きようと頑張っていただけだった。地獄のような日々から、ここまで生き延びてくれたことが嬉しい。心からそう思えたからこそ、日常は変わっていったのだと思う。