「職場の仕切りたがり屋」のモラハラに苦悩する29歳清掃員…精神科医が教える“身の守り方”
職場でのモラハラに該当するか?
今回は「府中こころ診療所」「こころ診療所吉祥寺駅前」の院長、医療法人社団HeartStation理事長を務める精神科医の春日雄一郎氏に取材を試みた。 「府中こころ診療所」「こころ診療所吉祥寺駅前」には、自己愛性パーソナリティ障害などの人から職場や家庭でパワハラやモラハラのハラスメントを受け、苦しむ人が多数訪れる。以下は、春日医師へのインタビュー取材の回答を筆者が構成したもの。
1.尊大型ASDの可能性があるかもしれない
「事例の女性社員の行為には確かにこだわりが強い一面があるとは思いますが、モラハラであるか否かを判断するためには、受け手の社員である吉本さんの言い分だけで正確に判断をするのは難しいと思います。 受け手である複数のパート社員が一致して「彼女の行為はモラハラだ。必要以上に強引に押し付けられ、精神的にもストレスを感じ、困っている」と受け止めるならば、モラハラである可能性が高くはなります。 この事例だけで正確に断定するのは難しいのですが、事例の女性社員が発達障害である可能性は否定できないとは思います。 周囲が強いストレスを感じるほどに強いこだわりがあるとすると、生まれながらの発達障害であるASD(自閉症スペクトラム)である場合がありえます。それを判断する1つのポイントは、過去において友人や知人、家族との人間関係がうまくいっていたのかどうかです。子どもの頃の友人などとの関係も含みます。人間関係のトラブルが明らかに目立つ場合は、ASDの可能性があります。 ASDには様々なタイプがありますが、その1つが尊大型です。近年はモラハラやパワハラの背景に、尊大型ASDを指摘するケースが増えてきました。このタイプのASDの大きな特徴は自分を特別視し、相手を見下し、圧(圧力)を加えることです。周囲の人がこの行為に強いストレスを感じてしまう場合があるのです。 尊大型ASDは、発達障害に自己愛性パーソナリティ障害が重ね着をしていると捉えることもできる場合があります」