マンUのダービー戦勝利は“新時代の幕開け”に繋がる重要な1勝。アモリム新監督が示したアカデミー偏重からの脱却、宿敵を封じた柔軟な戦術【コラム】
なぜ器用ではないマグワイアを先発に抜擢したのか
この重要な試合で、勝ち方も良かった。まずアモリムの采配の柔軟性が光った。 前提として、このポルトガル人監督は3-4-3システムが代名詞だが、戦術に固執する頑固な指揮官というわけではない。むしろアレックス・ファーガソン以降、最も柔軟性のある監督と言える。 配置は3-4-3でも、各選手に与えられる役割は柔軟だ。その最たる例がこの試合でのハリー・マグワイアの先発起用だ。そもそもアモリムのサッカーでは、3バックの中央の選手には、攻守で様々な役割が求められる。そのうちの一つが、中盤の位置に上がって、アンカーのようにショートパスの起点になる動きだ。 この複雑なタスクをオランダ代表DFマタイス・デリフトは難なくこなしたが、イングランド代表DFはこのような器用なプレーは得意ではない。だが、アモリムとしてはマグワイアのパワフルなプレーを必要としていた。 理由は主に二つ。直近のユナイテッドがセットプレーでの失点が多かったこと、そして、デリフトがフィジカルの強いFWとのマッチアップをやや苦手としていることだ。ユナイテッド加入以降その傾向が最も顕著だったのは、ヨーロッパリーグのポルト戦で、スペイン代表FWサムエル・オモロディオンに完敗していた。ダービーでも、ノルウェー代表FWアーリング・ハーランドを止められるか不安が残る。 そこでアモリムは、マグワイアに対してショートパスに関するタスクを極力減らす微調整を行った。この試合ではワイドに展開して揺さぶる攻撃を増やしたのだ。こうしてイングランド代表DFの欠点を露呈させず、守備の安定を図った。 結果は試合を見れば一目瞭然だった。マグワイアは空中戦で圧倒的な強さを見せて、エースの完封も実現した。彼とは関係ない場面で、セットプレーから失点したものの、この采配自体は大成功だったと言える。 また全体の試合内容としても、一方的に攻められていない点も素晴らしかった。 そもそもエティハドでのマンチェスター・ダービーに関して、オレ・グンナー・スールシャール政権時代は相性が良く、21年3月に2-0で、19年12月に2-1で勝利している。近年でも勝利することはあったので、極めて珍しい結果というわけではない。 しかしペップ・シティになって以降、マンチェスター・ダービーでの勝利は、内容面が非常に悪いことが多かった。一方的に攻められ続けて、薄氷を踏みながら、GKダビド・デヘアの神がかったセービングと、少ないカウンターを決め切っての勝利ばかりだったのだ。 もちろん勝ちは勝ち。悪い結果ではない。ただし胸を張って、マンチェスターの勝者を名乗れる内容だったかというと、筆者はそうではないと感じていた。
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