なぜ大晦日決戦を前に4階級制覇王者の井岡一翔は「勝利への自信が確信に変わった」と豪語したのか
スパー数も約100ラウンドを数えた。ラスベガス調整よりも多い量だ。スパー相手は当日のアンダーカードでWBOアジアパシフィック・バンタム級タイトルに挑戦する同じジムの比嘉大吾が務めた。ファイティングスタイルは田中とはまったく違うが、一階級上の屈指のパンチャーとのスパーで、井岡の優位点とされるパワーとフィジカルにさらに磨きがかかったと考えられる。 田中のスピードと回転力、そしてアグレッシブなスタイルに井岡が対抗するのは、ディフェンス技術を軸にした経験と、この階級ですでに4試合を戦ったことで培ったパワーだ。 だが、その優位点を井岡は否定した。 「経験と階級に慣れた優位点?あまりそういう考えはない。僕と(田中で)はモノが違う。階級どうの、ボクシングスタイルどうのではなく、根本的に僕と彼では持っているもの、本質的なものが違うので。細かくどこがどう(優位か)とか考えていない」 そしてこうまで言う。 「業界だったり、記者の方は、多少なりとも注目カードと思うかもしれないが、僕の中ではビッグマッチでも注目カードでもない」 凄まじいほどの自負。まるで自らを洗脳するかのような発言である。 井岡が狙うのは統一王者だ。 「一番やりたい」と熱望していたWBC世界同級王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(30、メキシコ)とWBA世界同級王者のローマン・ゴンサレス(33、ニカラグア・帝拳)の統一戦が来年3月13日に開催されることが決定した。 「僕もニュースで見た。この試合をクリアしたら、その勝者とやりたい」 ベルトの統一という大きな夢を抱くからこそ田中戦で、その挑戦者にふさわしい評価を得なければならない。だからこそ有言実行の強気発言で自らを震い立たせ、逃げ場のない場所に追いつめているのだろう。 一方の田中もSNSに「背中に鬼の顔」と評されるほど、盛り上がった背筋の画像をアップ。4階級目となるスーパーフライ級に仕上がった肉体を披露した。 井岡が王者のプライドを胸に統一王者へと向かうパスポートを手にするのか、田中が史上最速の4階級制覇を成し遂げて世代交代を告げるのか。井岡がどう言おうが注目のビッグマッチである。