戦略性としたたかさ欠如の石破外交 安きに流れた対中傾斜、トランプ氏と対面会談見送り…安倍元首相は他国と「二国間関係」強化
【岩田明子 さくらリポート】 石破茂政権の外交方針に、疑問を感じざるを得ない場面が目立っている。1月中旬の日程を示されていた石破首相とドナルド・トランプ次期米大統領との対面会談を見送る一方、習近平国家主席率いる中国への関係強化を図っている。そこに戦略性は感じられない。 【比較してみる】中国と台湾の軍事力 第2次トランプ政権の「対中強硬姿勢」を警戒する中国が、日本をはじめとする周辺諸国との関係改善を進めるのは自明の理だった。ある意味、「安きに流れた」と言っていい中国への接近で利益を得られればよかったが、具体的な成果は出ていない。 昨年12月に訪中した岩屋毅外相は、王毅共産党政治局員兼外相との会談で、福島第1原発の処理水海洋放出に伴って中国が全面停止した日本産水産物輸入再開の合意を着実に履行することを確認した。だが、具体的な日程は決まっていない。岩屋氏は中国が海洋進出を強める東・南シナ海情勢についても深刻な懸念を伝達したものの、沖縄県・尖閣諸島での中国海警局船の航行は常態化したままだ。 ■安倍元首相は他国との「二国間関係」強化で対中関係改善 中国と関係強化を図ることは大切だが、2国間関係を強めるだけでは中国から譲歩を引き出すのは難しい。同盟国の米国をはじめ、世界各国と良好な関係を築くことが重要だ。それを実践して、中国との関係を改善したのが安倍晋三元首相だった。 第2次安倍政権が誕生した2012年12月当時、日中関係は最悪といえる状況だった。民主党の野田佳彦政権下の同年9月、日本政府が尖閣諸島を国有化したことに抗議する「反日デモ」が中国各地で頻発していた。 安倍氏が14年11月、APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に先立って習氏と初会談した際、習氏はニコリともせずにぶぜんとした表情だった。そこから幾度も会談を重ね、18年10月には習氏との首脳会談で、「競争から協調へ」「脅威でなくパートナー」「自由で公正な貿易体制の発展」という「日中新3原則」を確認するまでの関係を築いた。 対中関係で、安倍氏は具体的な成果も得ている。新潟県産のコメ輸入停止措置解除(18年11月)、中国で拘束された北海道大教授の解放(19年11月)などだ。