戦略性としたたかさ欠如の石破外交 安きに流れた対中傾斜、トランプ氏と対面会談見送り…安倍元首相は他国と「二国間関係」強化
安倍氏が中国との関係改善に成功したのは、あらゆる国との二国間関係を強くすることで「外交力を高めた」ことにある。そこには「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」に基づいた広い視野の戦略があった。安倍氏がトランプ氏に対して、ときに強く出られたのも各国との良好関係が背景にあったからだ。
「安倍外交」に比べて、現在の「石破外交」には戦略性としたたかさの欠如を感じざるを得ない。
石破首相は1月中のトランプ氏との対面会談を断念したが、それならば早期に電話会談を行って関係を深めるべきではないか。米国以外の西側諸国との関係を強めなければいけないし、中国やロシアなど覇権主義国家に対峙(たいじ)していくため「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の取り込みも重要だ。
日本の国益確保のため、石破首相は戦略的思考に基づいた外交を展開してほしい。
■岩田明子(いわた・あきこ) ジャーナリスト・千葉大学客員教授、中京大学客員教授。千葉県出身。東大法学部を卒業後、1996年にNHKに入局。岡山放送局で事件担当。2000年から報道局政治部記者を経て解説主幹。永田町や霞が関、国際会議、首脳会談を20年以上取材。22年7月にNHKを早期退職し、テレビやラジオでニュース解説などを担当する。月刊誌などへの寄稿も多い。著書に『安倍晋三実録』(文芸春秋)。