パレスホテル社長に聞いてきた、世界の格付けで最高位を獲得した背景から、施設の拡大方針まで
価格に対するパレスホテル東京の価値
では、パレスホテル東京ならではの価値とは何か。吉原氏は、企業理念“美しいこころで、感性をゆさぶる”を大事にし、日々、スタッフに「どうやってお客様の感性を揺さぶるか、1人1人が考えて取り組もう」と話しかけ、常に意識できる機会を作っているという。 四半期に一度、“感性をゆさぶった”スタッフを報奨する制度を設けているのもその1つ。また、吉原氏は自ら、約800人の社員の誕生日にカードを贈り、そこにも必ず、企業理念と「価格に対するパレスホテルらしい価値を提供していこう」というメッセージを添える。 ラグジュアリーホテルになるほど、フレキシブルな対応が求められ、パーソナライズなサービスは増える。満足度のカギを握るのは、人とのタッチポイントだ。 吉原氏は、館内を歩き、スタッフとゲストの信頼関係が伝わってくる光景を見るたびに「最終的には人がすべて。ホテルの価値は働く人で決まる」と実感している。世界のホスピタリティを知るセレブリティのゲストに「そのスタッフがいるから、パレスホテル東京を選ぶ」と言われることも少なくないという。 だからこそ、吉原氏は「価格に対する価値を提供する人員は、しっかり配置しなくてはいけない」とし、そのためにも「経営者はスタッフが気持ちよくサービスができるよう、バックアップの環境を整えることが大切」と考える。その一環として同社では初任給を上げ、ベアはこの2年連続でおこなった。「スタッフの満足度を上げることが顧客満足につながる」と、待遇面で採用も強化している。 一方、価格に対する価値の提供では「プライシングも非常に大事」と続ける。ゲストは価格に対する価値を感じて初めて来店する。「その時に価値が実感できなければ、二度と利用されない」と、値付けの重要性を強調する。 特に、世の中の物価が上昇し、ホテルのADRが上がっている昨今、日本のホテル価格は海外の主要都市と比較すると低価格だが、国内からは“高騰した”といわれる。国内と海外で価格に対する感覚に大きなギャップがある状況だが、吉原氏は「マーケット全体を見ながら適正な価格設定をしたい」という。日本人の価格感を大事にしながら、バランスをとることを重視している。