史上最高のどんでん返し映画は? 衝撃のラスト(1)主人公が信用できない…常識を揺さぶる究極の選択とは?
小説や映画には「信頼できない語り手」という手法がある。これは、語り手の信頼度を低くすることで読者や観客をミスリードするというものだ。要するに人間は、現実を都合良くゆがめてしまう生き物なのだ。今回は、実は悪人だった「信頼できない」主人公を描いた映画5本をセレクト。驚愕のどんでん返しの一部始終を紹介する。※この記事では物語の結末に触れています。第1回。(文:編集部)
『シャッター・アイランド』(2010)
監督:マーティン・スコセッシ 脚本:レータ・カログリディス キャスト:レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ 【作品内容】 精神病の犯罪者の収容施設がある孤島、シャッター・アイランドで事件が起こった。1人の女性患者が、「4の法則。67番目は誰?」という謎のメッセージを残して忽然と姿を消したのだ。 島全体に漂うただならぬ雰囲気に、怪し気な職員たち―。事件の担当となった連邦保安官のテディ(レオナルド・ディカプリオ)とチャック(マーク・ラファロ)は、取り調べを進めるうちに、病院内で行われていた恐ろしい計画に気づき始める…。 【注目ポイント】 『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002)や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)など、数々の作品でタッグを組んできたマーティン・スコセッシとレオナルド・ディカプリオ。この名コンビがはじめて挑戦するミステリー映画が、この『シャッター・アイランド』だ。 原作はデニス・ルヘインによる同名ミステリー小説で、脚本は『アバター』の製作総指揮を務めたレータ・カログリディス。キャストには、『ガンジー』(1982)でアカデミー主演男優賞を受賞したベン・キングスレーや『ブルーバレンタイン』(2010)でアカデミー主演女優賞にノミネートされたミシェル・ウィリアムズら、名優が名を連ねる。 殺人事件の捜査にやって来た連邦保安官を主人公に据えた本作は、一見するとスコセッシ作品ではおなじみのクライムサスペンスの様相を呈している。しかし、物語が進むにつれ、この設定は実はテディが頭の中で作り出した妄想であったことが判明する。 というのも、テディは実は、精神を病んだ妻を殺した殺人犯で、犯罪者として島にやって来ていたのだ。つまり、連邦保安官という人格は、現実を受け止めきれない彼が頭の中で作り出した「設定」だったのだ。 なお、先にも述べたように、本作はスコセッシにとって初の本格ミステリーとなる作品だ。とはいえ、作中には、他のミステリー作品に通底する「贖罪」のモチーフが散りばめられている。 最も印象的なのは、ラスト、ロボトミー手術を受けることを決意したテディがつぶやくセリフだろう。 「どっちがマシかな?モンスターのまま生きるか、善人として死ぬか」 このセリフには、過酷な収容施設の環境で、苦難にさいなまれながら生き続けるか、ロボトミー手術で全てを忘れ、死人同然となって生きるかという「究極の選択」を示している。愛する妻を手にかけたという悲痛な現実を受け入れること―。それこそが、彼に唯一残された贖罪の道だったのかもしれない。
編集部