チームにおいて「部下を認める」ことの一つの効能
アクノレッジメントが増えるほど、不安は払拭される
人は太古の昔から、協力関係をつくることによって生き延びてきた種です。好むと好まざるとに関わらず、ひとりだけでは生き抜いていくことはできませんでした。そのため人の生存本能は、絶えず自分自身が協力の輪の中に入っているかどうか、仲間はいるのかどうかということに対して、チェックをかけていると言われています。 自分が協力の輪の中に入っていないということは、ひとりぼっち、つまり「死」を意味するわけですから、これはもう細心の注意を払ってチェックをかけています。そして、そのチェックに対して「イエス!」で答えてくれるのが、他人からの「認めているよ」という言葉なのです。 出した成果や強みを認めるだけでなく、「おはよう!」「元気?」といった日々の声かけにいたるまで、「あなたがそこに存在していることに気が付いている」というメッセージのすべて、つまりアクノレッジメントが「生き残れるか?」という不安を払拭することにつながります。 そしてさらにアクノレッジメントの量が増えれば、相手にとってそれは不安を払拭するという、マイナスをゼロに戻すためだけの役割を担うのではなく、ゼロをさらにプラスへと高めるエネルギー源となっていきます。 逆に存在を認められているという実感が手に入らないと、もう頭は騒がしくなります。それは単に「認められていない」ではなくて、サバイバルできないかもしれない、という生存に対する危機ですから、内側は重くざわつきます。 不安で不安でしょうがなくなるでしょう。だからこそ人は「君がいることに気が付いているよ」と伝えてくれて、不安を取り除いてくれる人を求めます。 安心したいのです、みんな。 そして、安心したいという究極の欲求を満たしてくれた人に対して、人は絶大な信頼を寄せます。その人のリクエストには応えてあげたい、そう思うのです。 なぜならその人の期待に応えれば、またあの安心感が手に入るかもしれないのですから。うずくような不安をその瞬間は味わうことなく済むわけですから。
鈴木義幸([株]コーチ・エィ代表取締役 社長執行役員)