韓国大統領代行の首相弾劾訴追案を可決 野党が判事任命保留に反発、政治混乱に拍車
【ソウル=桜井紀雄】韓国国会は27日、「非常戒厳」宣布を受けて弾劾訴追された尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の権限を代行する韓悳洙(ハン・ドクス)首相の弾劾訴追案を可決した。国会在籍議員300人中、多数派の革新系最大野党「共に民主党」を中心に192人が賛成した。韓氏は職務停止となり、崔相穆(チェ・サンモク)経済副首相兼企画財政相が大統領と首相の権限を代行する。 大統領権限代行の弾劾訴追は初めて。大統領に続いて首相まで弾劾訴追される異例の事態に、政治的な混乱に拍車が掛かり、外交や安全保障、経済への影響も避けられない状況となった。 共に民主党が26日、尹氏の弾劾審判を行う憲法裁判所で欠員となっている判事の任命を韓氏が保留したことに反発し、弾劾訴追案を提出した。同党は戒厳で国会などに兵力を投入した「尹氏の内乱に韓氏が加担した」と強調。李在明(イ・ジェミョン)代表は弾劾案の採決を前に「内乱勢力を迅速に根絶することが韓国を正常化する唯一の道だ」と主張した。 禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長は、首相に対する弾劾の可決条件は過半数だと表明。しかし、保守系与党「国民の力」は大統領と同じ3分の2以上の賛成が必要だと抗議し、大半の議員が採決を欠席した。弾劾理由も憲法上の要件を満たさず無効だとして憲法裁に効力停止を求めて仮処分を申し立てた。 一方、憲法裁は27日、尹氏の弾劾審判を開始した。本格的な審理に先立つ弁論準備手続きを行い、尹氏の弁護団は争う意向を明らかにした。 検察は27日、戒厳を主導したとして、内乱の重要任務従事などの罪で、金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相を起訴した。戒厳に絡む関係者の起訴は初めて。