桐生祥秀が挑む2年目の9秒台との戦い
向かい風3・5mと悪条件だった、5月11日のゴールデングランプリ東京の男子100m。2レーンを走った桐生祥秀は、10m過ぎから爆発的な加速で抜け出していく隣のレーンのジャステン・ガトリン(アメリカ)に、何の抵抗もできなかった。それだけではなく、いいスタートを切った1レーンの大瀬戸一馬を突き放せず、競り合って10秒46で5位。そんなレースを桐生は「悔しさよりも、速いなと思った、世界のトップとの力の差を実感した」と振り返った。 だが優勝したガトリンは10秒02。向かい風3・5mでのその記録は驚異的なもの。彼がシーズン序盤でいきなり、9秒79の自己記録にも匹敵するような走りを見せたということだ。2位のマイケル・ロジャース(アメリカ)は10秒11だが、3位の9秒92を持つクリストフ・ルメートル(フランス)は10秒31。そのタイム差を見れば多少の物足りなさはあるが、桐生はまずまず、力通りの走りをしたともいえる結果だ。「去年のグランプリはガチガチになっていたが、今年はその時よりも自信につなげられたと思う。でも力の差は歴然としているから、スタートとかどの局面というのではなく、すべての面で力を付けていかなければいけないと感じた」。 昨年は4月の織田記念で10秒01を出した桐生。一躍期待の新星として注目されながらも着実に結果を出して初の世界選手権代表にもなったが、それに続く記録は追い風2・7mの10秒03はあるが、公認のセカンドベストは10秒17で次は10秒19でアベレージは10秒2前後。そのために今季は10秒1台を安定して出し、それを0台に近づけることを目標にしているのだ。今年4月29日の織田記念の決勝は棄権したが、70m付近で太股の裏側に違和感を感じたという予選では、追い風2mという好条件を味方にし、ラスト10mは流しながらも10秒10で走った。本人はその結果を「アクシデントがなければもっと記録を出せると思う」と前向きに捕らえていた。